本研究は、X高校の中退者・卒業者にインタビュー調査を行うことにより、高校時代に生徒たちが自分たちで形づくっていた生徒集団ごとに、学校から仕事への移行経路に違いはあるのかということを明らかにしようと試みた。研究の結果、以下の点が明らかとなった。
1)〈ヤンチャな子ら〉という一つの生徒類型のなかにも、複数の経路をたどる者たちがいた。一方には、工場労働や配送業に就いて比較的安定した大人への移行をたどる者たちがおり、もう一方には、ホストやキャッチといったより不安定な仕事を転々とし、困難な経路をたどる者たちがいた。しかも、その違いは、生徒集団内部の階層性という形で、すでに高校時代に顕在化していた差異と対応していることが明らかとなった。さらに、生徒集団の内部の階層性は、安定した家庭で育つか不安定な家庭で育つかという違いにも対応していた。つまり、家庭背景の違いが、学校時代の生徒集団内部の地位の差をつくりだし、それがさらに高校離脱後の仕事への移行経路に違いを生み出すメカニズムがあった。
2)可能な限り多様な生徒にインタビューをしようと試みたが、X高校の中退者・卒業者へのアクセスにはかなりの困難が伴った。今回は10数名へのインタビューを行ったが、長期的な計画に基づいて、卒業前に調査を行うことを知らせておくなどをすると、より多数の者へのインタビューを行うことができたと考えられる。1)の知見は、学校生活における生徒集団内部の地位の差が、卒業後の仕事への移行経路と密接に関わっていることを示すものである。したがって、今後は、本研究の枠組みを展開したより詳細な調査・研究が求められる。
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