本研究では、第二次世界大戦以降に初等教育課程へ入学した子どもたちの修学記録を縦断的に追跡し、個々人の修学実態と歴史的社会背景をつき合わせてその関係を分析する。自然災害や政治事変といった歴史的な社会背景が発生当時およびその後において個々の子どもたちの修学実態にいかなる影響をおよぼしたのかを明らかにすることを目的とする。 研究最終年度となる本年度は、昨年度より引き続き、本研究課題の分析にかかわる歴史的資料の収集、修学パターン分析、学会での研究成果発表を実施した。今年度における、本研究課題の分析にかかわる歴史的な関連資料の収集にあたっては、主に米国議会図書館での収集を実施した。特に、1900年代から現在に至るまでの政策文書、国勢調査の調査結果報告書や研究書籍等の英文およびスペイン語による資料を収集することができた。これらの資料を用いて、これまで行ってきた修学実態のデータ分析結果とのつきあわせを行い、歴史的社会背景と修学実態との関連についての考察を継続して進めている。その結果の一例を以下に記す。 研究対象地域における識字や教育歴といった当時の状況を、国勢調査による調査データを用いて検討したところ、1960年代においてはそもそも地域において教育を受けた経験がある層は50%にも満たず、その当時就学可能であった児童のグループ自体が当該地域における少数派に属していた。1970年代においては教育歴のある層が当該地域において7割を占めるようになったものの、就学できたとしても卒業までたどり着くことのできない者が大半を占めていた。これらの分析結果については、学会における研究成果発表を実施しており、発表時に得られたコメント等をもとに論文の執筆を進めている。
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