本研究の目的は、タイにおける「実践研究者としての教員(teachers as researchers)」の養成・研修の意義と課題について、制度と実態の両面から解明することである。この目的を達成するために、次の4つの具体的研究課題の解明に取り組む。すなわち、(1)タイにおける「実践研究者としての教員」概念の受容過程、(2)教員養成におけるアクション・リサーチ関連科目の教授内容と指導方法、(3)教育実習生によるアクション・リサーチと指導体制をめぐる課題、(4)アクション・リサーチの効用に対する教育実習生ならびに現職教員の意識、の解明である。 最終年度にあたる平成29年度は、アクション・リサーチの指導体制に関する関係法規ならびに実施要項に盛り込まれた教育実習校の指導教員に求められる資格要件の分析に取り組んだ。その結果、教育実習生のアクション・リサーチを指導する立場にある教育実習校の指導教員にはアクション・リサーチの実績が明確には求められていないことが明らかになった。また、関係者への聞き取り調査から、教育実習校の指導教員を対象とするアクション・リサーチの研修機会も制度的には十分整備されていないことも明らかになった。これらはタイにおける「実践研究者としての教員」の養成・研修の課題であると言えよう。 さらに、最終年度は、本研究の成果を国際的に発信し、問題・研究関心を同じくする海外の研究者との国際情報交換を図るため、ICET2017(チェコ・ブルノ)、13thICTS(タイ・チェンマイ)、2017UKFIET(イギリス・オックスフォード)の計3回の発表を行った。これらの口頭発表については、目下、国際学術誌に、英語論文として投稿を進めている。
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