本研究では、アメリカと日本において、地域コミュニティが移民の子どもに対していかなる教育支援を行い、コミュニティのアクター同士がいかにしてネットワークを形成しているのかを明らかにすることを目的とした。また、アクションリサーチの視点を取り入れ、研究者としての立ち位置や役割を問い直しつつ、実践者との共同研究・実践の可能性も考察した。平成29年度は、日本の学校・NPOと協働し、移民の子ども・若者のエンパワメントと居場所づくりに関わり、コミュニティの人々と共に教育支援のあり方を考察した。具体的には、マイノリティ生徒が多く在籍する高校において、高校・NPO・大学と連携し、言語や文化の交流を行う部活づくりに関わり、多文化が尊重される居場所づくりの可能性と課題を検討した。また、アメリカで蓄積のあるサービス・ラーニングの研究・実践を参考にし、勤務校でサービス・ラーニングの授業を開講し、大学生と共に多文化の居場所づくりに関わった。居場所の固定化や排除の問題がありつつも、実践者とふりかえりを重ね、開かれた居場所づくりを目指して実践の改善を目指した。当該研究の成果は、広く社会に発信すべく、実践者と協働して国内の学会やシンポジウム等で報告した。また、国内学会・国際学会にて、アクションリサーチにおける研究者の立場性や役割について検討した論文を発表した。これまでの研究成果に基づき、移民の子どもの居場所や居場所づくりの重要性について論じた英語による単著をまとめ、Springer社から刊行した。
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