研究課題/領域番号 |
15K17390
|
研究機関 | 畿央大学 |
研究代表者 |
石川 裕之 畿央大学, 教育学部, 准教授 (30512016)
|
研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
|
キーワード | 才能教育 / 英才教育 / 積極的格差是正 / 韓国 / 地方 |
研究実績の概要 |
本研究の初年度となる平成27年度は、関連文献・資料の収集・分析など基礎的な研究に力を注ぐとともに、韓国の慶尚南道において訪問調査をおこなった。その結果、現在韓国の地方における才能教育は、財政難と教育行政評価の厳格化という大きな課題に直面していることが判明した。近年の才能教育関連予算削減の影響により才能教育対象者数が初めて減少傾向へ転じるとともに、一部の子どもや保護者の利己的な行動によって才能教育に対する不平等感や不信感が社会に広がりつつあった。こうした中、各地方はこれまで無償で提供していた才能教育プログラムを有償化することで財政難に対応しようとしていた。このような才能教育に対する逆風の中でも、政府は不利な条件にある子どもに対する特別な教育的配慮を才能教育に求めていた。その一例として、政府は各地方で実施されている公的な才能教育プログラムの定員のうち10%を不利な条件にある階層の子どもに当てることを要求していた。地方教育当局もこの目標を達成するために努力しているものの、才能教育対象者の質を一定以上に保つ必要性などから定員の10%という目標を達成することは容易でないことが明らかとなった。また全国的な傾向として、実際に才能教育プログラムにおいて特別な教育的配慮の対象となっている不利な条件にある子どもは、生活保護受給者の子女や農村・僻地に居住している子どもに偏っていた。このことは、特別な教育的配慮がもっぱら経済格差や地域格差の是正に注目しておこなわれていることを意味しており、反対に個人が持つ障害に対してはあまり配慮されていないことを意味していた。慶尚南道の場合も同じ傾向があり、同道内で障害を持つ子どもが才能教育プログラムにおける特別な教育的配慮の対象となっているケースはほとんど存在しないことが分かった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は4年計画の初年度であり、主要な文献・資料の収集・分析と現地訪問調査を通じて、2000 年代以降の韓国の才能教育における積極的格差是正措置のおおまかな動向を探ることが目的であった。この観点から本研究課題の目的は現在までおおむね順調に達成されているといえる。
|
今後の研究の推進方策 |
研究計画に則り、各地方の教育庁や才能教育機関への訪問調査をさらに進めることで、才能教育における積極的格差是正措置の実施状況を探ることが今後の主要な課題となる。
|
次年度使用額が生じた理由 |
時間的制限により、現地訪問調査が1ヶ所に留まったため。
|
次年度使用額の使用計画 |
本年度の未使用額は、当初予定していた現地訪問調査を次年度に実施することで使用する。
|