研究実績の概要 |
本研究の3年目となる平成29年度は、前年度までの調査・研究結果の整理・公表作業を進めるとともに、2015年に設立された英才学校である世宗科学芸術英才学校(高校課程)について現地調査をおこなった。同校は世宗特別自治市教育庁が管轄する公立学校であるが、英才教育振興法に規定された国内最高峰の才能教育機関である英才学校として、全国単位で選りすぐりの生徒を募集し、多額の公的財源を投入することで彼/彼女らに最高水準の教育環境を提供していた。同校の最大の特徴は、数学・科学分野と芸術分野を融合したSTEAM(Science, Technology, Engineering, the Arts and Mathematics)教育を実践している点にあった。2017年時点で韓国には8校の英才学校が存在しているが、このうち6校は従来の数学・科学教育を主としたプログラムを実践しており、世宗科学芸術英才学校と2016年設立の仁川科学芸術英才学校の2校がSTEAM教育を実践している。英才学校としては最も新しい2校がSTEAM教育を実践しているという点で、STEAM教育は韓国の才能教育における新たな潮流であるといえた。ただし、世宗科学芸術英才学校の教育プログラムにおいてもその中心となるのはあくまで数学・科学分野であり、数学・科学分野偏重という韓国の才能教育の特徴は維持されていることが確認できた。また、同校の設立計画は2012年に発足した行政都市である世宗特別自治市の建設に合わせて推進されたことが分かった。都市開発のために威信の高い学校を設立・移転させるという手法は、1970年代のソウル特別市江南地区開発の際にもとられた手法である。同校の設立についても同様に、英才学校というブランドにより教育環境のよさをアピールし、住民を誘致するという都市開発政策的側面が存在していたと考えられた。
|