研究課題/領域番号 |
15K17392
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研究機関 | 北海道教育大学 |
研究代表者 |
菊野 雅之 北海道教育大学, 教育学部, 准教授 (90549213)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 保科孝一 / 落合直文 / 古典教育 / 国語教育 / 森鴎外 / 萩野由之 / 与謝野鉄幹 / 言文一致 |
研究実績の概要 |
大正期の国語科教育専門雑誌である『国語教育』誌上における保科孝一の言説を網羅的に調査し(創刊の大正5年1月から大正15年12月にかけての期間内の記事)、古典教育に関する記事の抽出を完了した。その知見は近日学会報告・論文発表の形で報告する予定である。以降は、大正16年1月から昭和16年3月の終刊までの保科の言説を引き続き追う。 また、落合直文編『中等国語読本』の分析のための基本的史料である『中等国語読本編纂趣意書』の存在を明らかにし、その分析を通じて『中等国語読本』の編纂意図についても言及するに及んだ。また、落合の死後、森鴎外、萩野由之、与謝野鉄幹らが編集を引き継いだとされるが、鴎外の日記などの調査から鴎外自身がほとんど編集に関与していない可能性について言及した。これについては、引き続き調査を進めていきたい。 当時の文体の混乱、教材になりえる素材の不足のなかで、それらを統合し一つの読本の中に配置する作業に苦心した落合の様子が明らかになった。古文も一つの文体でしかなく、それらをどう配置するのかということに落合の関心はあり、古文の学習にどのような価値があるのかということを詳らかにすることには、それほどエネルギーは費やされていない。古文を文範として把握していた時期の雰囲気を残しつつも、後に保科孝一が国民性の陶冶という一言で古典教育を位置付けることとなる大正期の勢いにたどり着くこともなく、その過渡期に、落合の古典教材の把握は位置付けられるといえる。さらに落合読本の分析を進め、明治の教材観・文体観のありようを明らかにし、近代古典教育論の把握をさらに進めていく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
史料収集は順調に進み、それに基づいた知見について発表内容を整理する段階に入っている。また、その後の史料収集についても見通しが立っている。 また、落合直文の読本については新史料を発掘するに至っている。
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今後の研究の推進方策 |
本研究は史料収集とその精査が要の研究であり、まずはそのことを着実に進めていくことがなによりも研究の推進方策となる。今後も着実に進めていく。 それに加えて、近年の教育史研究に関する最新の論考の精読を併せて行っていくことで、より多角的で重層的な史料読解を可能とするよう研究者自身の研鑽を進めていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
全国規模での学会発表は日程や校務との関係で都合をつけることができず、赴くことができなかったため旅費による活用を実施できなかった。また、「人件費・謝金」は当初、品冊費、アブストラクトの作成の費用を見越してのものだったが、本年度については該当する学術誌ではなく、別の雑誌への投稿となったため使用されなかった。
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次年度使用額の使用計画 |
本年度については、すでに取材および学会発表などによる旅費としての活用が行われており、使用額を問題なく消化することができるだろう。本年度は、全国系雑誌への投稿・掲載を目指し、アブストラクト作成等の費用に活用できるようにする。
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