研究課題/領域番号 |
15K17393
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研究機関 | 弘前大学 |
研究代表者 |
小瑶 史朗 弘前大学, 教育学部, 准教授 (50574331)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 地域 / 国際理解教育 / マルチ・スケール / 重層性・開放性 |
研究実績の概要 |
平成27年度は、地域学習と国際理解教育を連関させるべき根拠を理論的に探究する作業を進め、その成果を日本国際理解教育学会・全国研究大会の場で発表するとともに、学術論文として投稿した。 この理論構築作業を進めるに際しては、①戦後初期のユネスコ協同学校計画の教育実践、②1990年代の地域に根ざした国際理解教育実践、③上原専禄の国民教育論の検討を進めた。このうち、①の検討からは、戦後初期の経験主義教育と関連付けられた国際理解教育実践が積極的に模索されながらも、地域それ自体を目的化する視点が希薄だったことを明らかにした。また②については、1990年代に至り、地域自体を目的化する関心が萌芽する一方で、その関心が都市圏における多文化共生問題に集中していたこと、そして「日本文化」や「伝統文化」という観点から地域文化へ接近し、国家的枠組みを強調するような学習の潮流が生まれていたことを読み解いた。そして、③については、上原の教育論が「地域・国家・世界」の重層的かつマルチ・スケールな見方・考え方をいち早く提起していたこと、そして地域の自治や自立性を基盤に据えながら国家権力への批判的視座を導いていた点を析出する一方で、地域が「国家・民族」の下部構造として位置づけられる傾向にあった点を批判的に検討した。 これらの検討を踏まえつつ、国際理解教育においては主体的な学びの環境基盤として「地域」に立脚するとともに、その重層性・開放性を捉えていくことが重要になることを提起した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の予定通り、文献資料の収集を進め、その検討を通じて、地域と国際理解教育を連結させる理論的根拠を明確化することができた。
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度は、地域と関連付けた国際理解教育の実践基盤の確立に取り組む予定である。その際、上原専禄の国民教育論に刺激を受けて、1970年代に提案された教育実践の検討を進める。「地域・国家・世界」を串刺しにする教育論を展開した上原の問題提起に呼応して、どのような主題が、どのような観点から教育実践化されたのかを究明していく。そのうえで、今日の教育実践の主題や方法について実践的指針を導出したい。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究では歴史的検討を実施するにあたり、絶版本などは古書店を通じて収集を進めた。それらの書籍の中には、定価よりも安価なものも含まれていたため、予定よりも支出を少なく抑えることができた。そのため、これらを次年度に繰り越し、旅費等に充てることとした。
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次年度使用額の使用計画 |
繰り越し分は、旅費として使用することを計画している。関連学会が地方で開催されることに決定したので、当初予定よりも多くの支出が見込まれるためである。
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