本研究では,加工教育における工具操作やその指導方法について神経教育学の観点から検証した。具体的には,教示方法の異なる2つの条件を設定したのこぎり引きにおいて切断成績を評価するとともに,切断時の脳血流量を近赤外線分光法(NIRS:Near Infra-red Spectroscopy)により計測した。 平成30年度は,平成27年度~平成29年度までに得られた研究成果をまとめ,論文投稿を行った。論文は,科学教育研究(日本科学教育学会)第42巻第4号(2018年12月発行)に掲載された。研究成果の概要を下記に示す。 のこぎり引き経験の少ない大学生20名を調査協力者として,試行教示群(最初は教示を行わずに1度切断を行い,その後教示をしてからもう一度切断を行う群)と教示群(最初に教示を行い,2度切断を行う群)を設定し,のこぎり操作時の切断成績と脳活動を測定するための調査を実施した。その結果を以下にまとめる。 ①切断成績について:教示群は試行回数が増えるにつれて切断の長さが伸びるのに対し,試行教示群では教示後の試行において切断長さが停滞することが示された。 ②脳活動について:教示群では教示が与えられても試行を繰り返すにつれて脳活動が減少していた。試行教示群では,1度切断した経験と教示された内容を統合させて作業に臨んだため,試行を繰り返しても脳活動が活性化することが明らかになった。 これらの研究成果から,教示方法を変えてのこぎり引きを行うことで,脳活動に配慮した教育を施せる可能性が示唆された。
|