本研究は、定時制高校において展開されている「実社会の生産活動・経済活動と連動した地域連携型教育実践プロジェクト」を対象としたフィールドリサーチを実施し、(1)高校教育と職場を往還する若者たちの学習経験、(2)それを支える学校教員、協力企業、地域関係者等の意識やかかわりの変容、そして、(3)具体的な実践を媒介して構築されていく組織関連携・コミュニティ形成という三層のプロセスの相互作用を分析し、高校教育から労働社会への移行過程を再編成する教育実践の展開論理を明らかにしていくことを目的とするものである。 平成29年度は、前年度から引き続き定時制高校及び地域社会での調査活動を継続しながら、上述の省察的かつ重層的な学習活動の成果を「地域に根ざした新しい教育実践モデルの開発」に反映すべく、データ分析と研究協議を進めた。特に実践の持続的な展開を支えるコーディネーターの役割及び制度設計について検討を進めた。 主な研究実績として、当該プロジェクトを通じて得られた実践経験を振り返り、その成果と課題を共有してさらなる実践の発展の足場としていくコミュニティ(ラウンドテーブル式実践研究会)を生徒たち、学校教員、地域関係者それぞれに組織化し、それらの間で実践記録や多様なデータ・成果物を交流させることで相互作用を活性化させることに成功した。また、そのような重層的な学習活動において媒介的な機能を果たすラウンドテーブルを位置付けた地域連携型の教育実践モデルを報告書としてまとめることができた。
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