研究課題/領域番号 |
15K17398
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研究機関 | 奈良教育大学 |
研究代表者 |
舟橋 友香 奈良教育大学, 数学教育講座, 准教授 (30707469)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 数学科授業 / 教授・学習過程 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は,日本の経験豊富な教師による算数・数学科授業における相互行為のパターンを発問-応答過程を視点として特定し,その展開にみる教授行為・学習行為の特質を明らかにすることである.令和2年度は,次の2つのことに取り組んだ. 第一に,奈良教育大学附属中学校に協力を依頼し,令和2年6月から令和3年3月にかけて,中学校第1学年の数学科授業に関する授業データ及びインタビューデータを新規に収録した. 第二に,11月に国内学会で発表した内容に,新たなインタビューデータ及びその分析を加えて加筆・修正し,日本科学教育学会機関誌「科学教育研究」に以下の内容の論文を投稿した:バリエーション理論を用いた事例の検討を通して,多様な考えに触れながら学ぶという営みについての新たな解釈の可能性を提示することを目的とする.まず,バリエーション理論の概要と,それを数学教育に援用した研究の展開を外観する.次に,中学校第1学年のある一人の生徒が負の数同士の積に関して経験したバリエーションを特定することで,多様な考えを学習者がどのように捉えていたのかを特徴づけていく.その結果,変化と不変のパターンは単線形ではなく複雑な構造をしていたこと,及び学習者は授業での出来事だけでなく,個別に経験したことも含めて時間の経過を伴って融合の段階に至っていることを指摘した.そして,生徒Aが解決の多様性を「立体的」と表現していたことに焦点を当て,アスペクトの変化という学習者が構築している豊かな経験を捉えることの必要性を指摘した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
令和2年度は最終年度にあたる予定であったが、新型コロナウィルス感染症拡大の影響により発表を予定していた学会が延期になるなど、これまでに得られた知見を総合して研究成果を発表することが困難であった。また、新たなデータの収集を経て、その内容から得られる知見の精緻化をする必要性が生じた。研究期間を1年延長し、これまでに得られたデータの総合的分析及び研究成果の発表を令和3年度に行うこととする。
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今後の研究の推進方策 |
奈良教育大学附属中学校の協力を得ながら、引き続き授業データの収集を行うとともに、これまでに得られた知見を総合して研究成果を発表する。研究発表の場として、昨年度から延期された4 年に1度開催されるInternational Congress on Mathematical Education(ICME14, 上海大学, 7月)、日本教材学会(10月)、日本数学教育学会秋期研究大会(11月)、日本科学教育学会研究会(12月)における発表を予定している。
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次年度使用額が生じた理由 |
4年に1度開催される国際学会での発表を予定していたが、新型コロナウィルス感染症拡大の影響により1年延期となった。そのため、旅費にあてる予定だった金額を繰越することになった。延期された国際学会が次年度開催される予定であるため、それにあてる。
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