研究課題/領域番号 |
15K17400
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研究機関 | 北海道教育大学 |
研究代表者 |
幸坂 健太郎 北海道教育大学, 教育学部, 講師 (20735253)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 自律的な論理的思考 / 国語科 / 〈自分ごと〉認識 |
研究実績の概要 |
1.プロジェクト①「概念規定」 初年次の研究により、学習者の自律的な論理的思考を促すためには、方略などの認知的な側面、または学習者の〈自分ごと〉認識といった情緒的な側面がどちらも重要であることが既に明らかにされている。とはいえ、学習者の情緒的な側面と自律的な論理的思考の関連性については先行研究が極めて少なく、初年次の研究だけでは十分に学習者の情緒的な側面を踏まえた理論が構築できたとは言いがたい。そのため2年次は、特に学習者の〈自分ごと〉認識に焦点化し、先行研究になり得そうな様々な領域の文献を渉猟し、理論の拡充を行った。 2.プロジェクト②「評価考案」・プロジェクト③「単元実践」 初年次の研究により、学習者の認知的側面・情緒的側面の両方を踏まえた評価を行う必要があることが示された。確かに、この両側面を踏まえた論理的思考力の評価研究はほぼ皆無である。とはいえ、そのような評価の考え方は決して新しいものではなく、現場の実践レベルでは志を持った教員によって既に行われていることが想定される。以上のことから、2年次は、プロジェクト②・③について下記の研究アプローチを取ることとした。すなわち、学習者の自律的な論理的思考力育成を普段の実践で意識的に行っている現場の教員の協力を仰ぎ、その単元・授業実践を観察する。そして、教員との授業検討等を経て、彼らがどのようにして学習者の自律的な論理的思考を促し、さらには自律的な論理的思考力を評価しようとしているのか、その意識・無意識的な営みを理論化する。 具体的には、2年次、札幌市内の小学校に勤めるA教諭、札幌市内の中学校に勤める国語科教員B教諭の、計2名の研究協力を得ることができた。その上で、A教諭が担当する小学4年生の説明的文章の読みの単元を2つ、B教諭が担当する中学2年生の説明的文章の読みの単元を2つ、計4つの単元・授業実践を参与観察することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
プロジェクト①「概念規定」については、特に論理的思考力の情緒的な側面に焦点化して研究を進めることで、さらに初年次に構築した理論を精緻化することができた。 プロジェクト②「評価考案」・プロジェクト③「単元実践」については、当初の研究アプローチ(研究代表者自らが評価考案し、実践する)とは異なるアプローチを取ることにはなった。しかし、実践現場の理論化という、より教育実践に即したアプローチになったことで、本研究が構築する理論がより実践に還元されやすいものとなることが期待できる。その意味で、研究アプローチの変更は望ましいものであったといえる。また、変更後のアプローチにおいても、2年次には2名の小中学校の教諭の協力を得て、4つの単元を参与観察することができた。まだこれらの参与観察データを十分に分析・考察し、理論構築するまではできてはいないが、変更後のアプローチで順調に本研究を進めることができている。 また、3年次に向けて、2年次とは別の2名の教諭(C教諭・D教諭)の研究協力についての内諾も得られた。
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今後の研究の推進方策 |
3年次は、プロジェクト③「単元実践」・プロジェクト④「年間実践」を中心に進めていく。 プロジェクト③「単元実践」については、2年次に参与観察を行ったA・B両教諭の4つの単元実践データの分析を完了させる。これらの分析から得た知見を、3年次に行うプロジェクト④「年間実践」に活かす。さらに、プロジェクト③の新たな方向性として、C教諭の単元・授業実践を参与観察する。C教諭は中高一貫校に勤めており、2年次に参与観察を行ったA教諭(小学校)・B教諭(中学校)とは異なる知見を得ることが期待できる。 一方、プロジェクト④「年間実践」については、D教諭と研究代表者が、共同で単元・授業を構想しながら進めていく。D教諭は、研究代表者が勤める北海道の大学からは遠く離れた、岡山県内の高校に勤める国語科の教諭である。あえて遠方のD教諭に協力を仰いだのは、D教諭と研究代表者が大学院時代の同級生であり、単元・授業について忌憚ない意見を言い合うことのできる仲だからである。研究者が現場の教員と共同で研究を行う場合、単元・授業について率直な意見を交わし、新しい理論・実践を創り上げていくためには、両者の親密な関係性が非常に重要なファクターとなる。ましてや、プロジェクト④「年間実践」のように長期にわたる現場の協力を得るためには、当該教諭との親密な関係性が不可欠である。以上のことから、プロジェクト④「年間実践」については、研究代表者と旧知の仲であるD教諭の協力を得ることとした。
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次年度使用額が生じた理由 |
2年次、研究協力を仰いだ2名の教諭が幸い研究代表者の大学がある札幌市内の学校に勤めていたため、単元・授業データを集めるための「旅費」をあまり使用していない。また、協力を仰いだ2名の教諭に対して、教諭が勤める学校側の諸事情により謝金の支払いができなかった。そのため、2名の教諭への「人件費・謝金」の使用が行われていない。以上のことから、差額が生じたと考えられる。
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次年度使用額の使用計画 |
3年次、研究協力を仰いだ教諭が遠方に勤めていることもあり、差額分は3年次に単元・授業データを収集するための「旅費」に充当する計画である。
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