まず、最終年度の研究成果を述べる。最終年度は、プロジェクト③「単元実践」、④「年間実践」を中心に進めた。 プロジェクト③「単元実践」については、中高一貫校に勤めるC教諭による、中学3年生を対象とした説明的文章を読むことの指導単元と、高校1年生を対象とした論理的文章を書くことの指導単元を観察・記録した。これらの実践から、学習者の自律的な論理的思考を促すためには、授業レベルとして、学習者自身が〈いま、ここで〉使っていることばの有り様を自覚させたり、発問により学習者の中に問いを持たせたりすることの重要性を明らかにした。プロジェクト④「年間実践」については、岡山県内の高校に勤めるD教諭による、高校1年生を対象とした論説・評論を読むことの指導単元を、計3回実践した。また、D教諭が勤める高校において生徒に対するインタビュー調査も実施し、実際に高校生が論説・評論に対してどのような〈自分ごと〉認識を持っているかを質的に調査した。その結果、学習者が論説・評論を〈自分ごと〉として捉えているかどうかを評価する規準・基準を開発し、その規準・基準に即した実際の評価サイクルの具体を年間レベルで示すことができた。 続いて、研究期間全体を通じての研究の成果を述べる。本研究全体の成果は3点ある。 1点目は、学習者の自律的な論理的思考を促すためには、学習者が対象を〈自分ごと〉として捉えるという情緒的な側面を捉えることが必要であることを理論的に示したことである。2点目は、特に自律的な論理的思考力の育成が期待される中等教育段階の論説・評論の読みの指導において、論説・評論を〈自分ごと〉として捉える学習者を育成するための方法論を、具体的な授業レベルで明らかにしたことである。3点目は、実際の年間実践を通して、学習者の論説・評論に対する〈自分ごと〉認識を捉え、促していくための評価サイクルを実践的に開発したことである。
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