研究課題/領域番号 |
15K17403
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研究機関 | 高知大学 |
研究代表者 |
服部 裕一郎 高知大学, 教育研究部人文社会科学系教育学部門, 講師 (50707487)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | クリティカルシンキング / 統計的リテラシー / データの分析 |
研究実績の概要 |
ジェネリックスキルとも呼ばれるクリティカルシンキングを数学教育の文脈で如何に育むことができるのか。この課題意識のもと,本研究では数学教育で育成されるクリティカルシンキングの理論的な位置づけ,特質,構成要素を明らかにし,クリティカルシンキングを育成する実践的な数学授業モデルを提案することを目的としている。この目的を達成するために,平成27年度に実施した主な研究の成果を以下に示す。 研究初年度にあたる本年度は,クリティカルシンキングと統計的リテラシーとの関連性を考察すべく,主に統計分野に焦点を充て,高等学校数学Ⅰ「データの分析」単元における2本の実践授業を検討した。内容「相関係数」における提案授業では,統計情報として機械的に算出した相関係数をそのまま鵜呑みにせず,複眼的に「批判的な解釈」を生徒に促すことをねらいとした。その結果,統計的リテラシーの情意的要素である「批判的姿勢」を作用させ,認知的要素との相互循環のもと,自らの力で「批判的解釈」を遂行する生徒の様相を捉えることができた。 「データの分析」単元学習終了後の発展教材として位置付けた提案授業では,「データの加工をともなう統計的な分析を通して,現象を的確に分析する能力を育むとともに,ものごとをクリティカルに検証する態度を涵養すること」を指導目標とした。具体的には,生徒達に平成22年国勢調査(総務省統計局)から引用した4つのデータをローデータ(何の処理もしていないデータ)として与え,グループ活動を通して分析活動を行わせた。その結果,多様性をもたせた問題設定(明確な解が存在しないなど,多様な考えが創出する様な問題の設定)が生徒達のクリティカルシンキングの育成に一定の効果が認められたこと,また,授業後の調査問題においては,本授業実践が特に「知の創造」に関わる「改善しようとする態度」の育成に寄与することが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
上述したように本年度は特に実践的側面に重心を置き,統計分野における 2本の実践授業を検討した。その結果,クリティカルシンキングを育成する数学授業の設計において,統計的リテラシーの観点からの指導上の示唆を得ることができた。また,次年度には,日本数学教育学会第4回春期研究大会(於:埼玉大学)において,創成型課題研究テーマⅣ「数学教育を通した批判的思考力の育成」の登壇者として,研究発表及び参加者による討議も予定されている(2016年6月予定)。このことからも本科研の現在までの達成度としては「おおむね順調に進展している」と判断できる。
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今後の研究の推進方策 |
今後は数学教育におけるクリティカルシンキングの概念規定(特質,理論的位置づけ,構成要素等)の考察も踏まえながらのモデル授業開発が求められる。平成27年度は実践的な研究の側面からの検討が中心であったことからも,次年度以降は文献解釈的な研究の側面も重視しつつ考察を深めたい。また,数学教育におけるクリティカルシンキング(批判的思考)研究者との議論や研究協力者との定期的な打ち合わせも継続して行い,具体的な指導案づくり及び評価計画も平成28年度中に準備していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初予定していた情報収集のための学会(研究会)参加が勤務校の校務により実現できなかったため,幾らかの次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
今年度は,研究に必要な文献購入を中心に,研究成果の発表や研究協力者との研究打ち合わせ,情報収集のための学会(研究会)参加旅費に充当する予定である。
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