最終年度は、これまでの調査内容をふまえた上で、新たな研究課題の設定につながる追加調査を行うことができた。特に、韓国、ならびに日本を中心に、多文化共生を目指す社会科、シティズンシップ教育の実践状況について、具体的な学校・授業の観察を通じた、ケース・スタディに着手することができた。特に、韓国では実質的な多文化化の急速な進展を受けて、異文化の受容を促す教育的配慮が、急速に広まっていることがわかったが、その効果や意義についての検証が必要であることも課題として見いだされた。 さらに、本研究を通して、主に日本と韓国における歴史の語られ方、表象のされ方について、比較検討することを新たな研究課題の一つとして設定することの重要性を見いだした。さまざまな歴史博物館などの展示物の内容、展示手法、説明の仕方などについて情報収集をする中で、アイデンティティの醸成や国民形成の教材としての博物館の重要性、各国でのその位置づけ、役割、影響などについて検討し、シティズンシップ教育における博学連携の重要性、国際的な連携の重要性、その方法といったことについて追究する必要性が、改めて課題として見いだされた。 また、人種や民族に由来する異文化に限らず、LGBTQや発達障害など、その他さまざまな異文化に対する寛容性についても、欧米の影響を受けながら独自の取り組みを展開しているアジア諸国との比較を通して、日本における教育のあり方を検討していく必要があるということも、本研究を通して見いだした新たな課題である。
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