研究課題/領域番号 |
15K17408
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研究機関 | 東京福祉大学 |
研究代表者 |
石崎 達也 東京福祉大学, 教育学部, 准教授 (50612818)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 教員養成 / ボランティア / 教育的公共性 / 臨床教育学 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、学習支援ボランティア活動を通した循環型教員養成モデルを構築することである。本研究は、基礎研究・調査研究・開発研究の3つの段階を設定して行われている。平成28年度の研究実績として、「調査研究」に関しては、前年度に引き続き、①夏期休暇中の群馬県伊勢崎市立の小・中学校において、学習支援ボランティア活動に参加した約100名の大学生を対象に質問紙法・エピソード記述の手法を用いてデータを収集した。②学生ボランティアの受け入れ先の学校に対してアンケート調査を実施し、データを収集した。③集計したデータをもとに勉強会を実施し、ボランティア活動の「体験」の記述作業をとおして、個々の学生にもたらされた「気づき」に関する分析を行い、第75回日本教育学会大会において研究内容と調査結果の中間報告を行なった。 次に、「基礎研究」に関しては、まず、これまで他大学や各自治体が実践してきた「学校ボランティア活動」について情報収集した。さらに、研究協力者とともに「教育的公共性」と「省察」をテーマとした「教師教育学」に関する文献を読み進め、教師を目指す学生「学び」の活性化と質的向上につながる教職ボランティア活動のあり方について検討した。さらに、地域と大学の双方が未来に向けた新しい価値を生み出すために、どのような視点を持ち、取り組みを重ねていくかを考える域学シンポジウム(於 東北学院大学)に研究協力者とともに参加し、本研究に関する考察を深めた。 最後に、「開発研究」に関しては、平成28年12月9日に研究協力を依頼している伊勢崎市教育委員会の方をお招きし、「教職ボランティア研究成果発表会~「学習支援ボランティア活動」をとおした教員養成モデルの構築について」と題し、ボランティア参加学生の活動体験報告を中心とした本研究の成果発表会を実施した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究の進捗状況に関しては、本研究代表者の所属キャンパス異動に伴う困難さを抱えた上、大学と地域の学校との連携推進の中心的役割を担っていた研究協力者が、平成28年度からその任を外れ、新たな担当者との連携のもとで活動を行うことになった。その中で、「調査研究」に関しては、調査自体は順調に終了したが、集計段階で大量の文字データを入力することが求められたため、集計結果が出るのが当初の予定より1ヶ月程度遅れることとなった。その影響から「報告書」並びに「学術論文」の作成も遅れている。「基礎研究」については、第75回日本教育学会大会において、本研究の中間発表を発表した際に、司会の方から調査結果の分析方法の不十分な点を指摘されたため、ボランティアの質的研究に関する先行研究を参考にして、分析方法の再検討を進めている。「開発研究」については、循環型の教職ボランティアリーダーの養成を目指し、継続して教職ボランティアに参加した学生と地域の学校教員や教育委員会の先生方とが相互に交流する研究成果発表会を計画・実施したことが、一つの成果として挙げられる。 また、学校ボランティア活動を実践している他大学への視察に関して、日程調整が困難であったため、今年度も実施できなかったが、大学と地域社会の連携推進に関するシンポジウムに参加し、地域の活性化に貢献しうる人材育成という大学に課せられた課題について、教員養成という観点から考察を深めることができた。
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今後の研究の推進方策 |
本研究の今後の推進方策に関しては、補助事業期間延長を申請し、承認されたため、当初の研究期間であった2年間では十分に分析できなかった本研究の成果を研究協力者とともに文章としてまとめ、広く報告することを目的とする。 特に、日本教育学会で中間発表をした際に指摘された本調査結果の分析方法の再検討と新たに2年間では取り組むことができなかった他大学との研究交流を中心に平成29年度の研究計画予定表を作成した上で研究を進める。 最終的には、本研究の集大成としての報告書を作成し、報告書をもとに研究協力を依頼している伊勢崎市内小中学校及び教育委員会から、本研究活動に関するフィードバックを受けることにより、教職ボランティアの意義についてまとめるとともに、学校教員を目指す大学生は、学習支援ボランティア活動をとおして、自主的・主体的に学校現場を経験することにより、教師という立場を「体験」し、現場の学校教員も次世代の学校教員を育てることをとおして、子どもだけではなく、次世代の学校教員をも育てているという意識を持つことにより、さらに実践的な教員へと育っていくという「育てる活動」のつながりが、本研究が提起する「教育的公共性」の展開につながっていくという研究を推進していきたい。 特に、大学と地域社会の連携推進に関するシンポジウムに参加することで、多くの大学がボランティア活動を単位化していることを踏まえ、学習支援ボランティア活動の単位化は、「教育的公共性」を生成することを阻害する要因となってしまうのではないか、という点に着目して研究をまとめていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた理由に関しては、主に、①研究協力者とボランティア参加学生との日程調整ができなかった点、②研究協力者が発表を予定していた学会への参加ができなかった点、③最終的な報告書が作成できなかった点があげられる。 まず、本研究代表者が当初予定していた勉強会について、ボランティア参加学生の多くが教育実習や教員採用試験準備を理由に定期的な勉強会への参加ができず、当初の予定通りの勉強会を実施することができなかった。次に、学会発表について、研究協力者とともに発表する予定だったが、研究協力者が大学業務等で学会に参加できなかった。また、年度末に本研究内容をまとめた「報告書」を作成する予定だったが、計画が当初の予定通りに進んでいないため「報告書」の作成にかかる費用が未使用となった。
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次年度使用額の使用計画 |
使用計画としては、本科研費研究課題の2年間の成果をまとめ、学会等で発表を予定しているため学会参加費と旅費に使用する。次に、「報告書」の作成に向けた研究協力者との打ち合わせ係る費用と本研究の集大成としての報告書の作成費用、さらに報告書をもとに研究協力を依頼している地域の教育機関から本研究活動に関するフィードバックを受けるために使用することを予定している。
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