本研究は、幼児期の表現の育ちにおける日本の伝統音楽体験の意義について検討することを目的として行われた。実践では、伝統音楽独特の歌唱や模倣の仕方を体験し、音を生みだす際の身体感覚を顧みるような活動とそれと関連する演奏とが繰り返されることにより、未知の文化に出会った子どもが、能動的にその担い手となっていく姿が見られた。また、幼児を対象とした日本の伝統音楽体験の体系化に向けては、①日本の伝統音楽がもつ特性(唱歌、伝承手段としての模倣など)を手がかりとし、それらを活動の軸とすること、②複数の手がかりを組み合わせる、また複数回体験すること、③発達段階に合わせた導入・展開の工夫の必要性が示唆された。
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