研究課題/領域番号 |
15K17417
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研究機関 | 相愛大学 |
研究代表者 |
横島 三和子 相愛大学, 人間発達学部, 准教授 (20584717)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 養護教諭養成 / 養護学 / 保健室の教育活動 / 教育実践の可視化 / 科目内容構成 / カリキュラム / アクティブ・ラーニング |
研究実績の概要 |
平成28年度の研究実績としては、次の点が挙げられる。1)教育的役割を担う養護教諭として学びを組織できるような力量の形成を目指し、養護教諭の専門性を支える「養護学」の学問構築に向けたアプローチ方法について検討した。教科の学習指導場面における内容構成では、すでに体系化された内容と子どもの世界との接点をみつけることで、子どもの認知に即して再構成された内容を明確にして相互作用時の媒介物を創り出すことは、それほど困難ではない。しかし、養護教諭の実践場面では、来室した子どもの状況を即座に読み取って理解し、必要となる内容を適宜場面ごとに明確にしなければならず、高度な実践力が求められる。そこで、養護教諭は、独自の専門性とすり合わせながら内容として再構成する力を身につけておくことが必要になる。また、内容を創り出すためには、子どもの認知的活動を理解しておく必要がある。子どもの世界と内容がどう結びついているかを読み解くための手がかりとして、認知的活動の連続性とプロセスに着目したスキーマ理論が有効になると考えた。養護教諭は、子どもの育ちや学びを保障するために、子どもが対面する問題やそれを取り巻く世界、そして解決に至るまでのプロセスに立ち会うことになる。以上のことから、養護教諭は、教育的役割を担う高い専門性を備える必要があり、その軸となる学問としての「養護学」の構築が重要になるといえる。これらの研究成果は、日本養護教諭教育学会第24回大会において公表した。2)教育実践構造可視化サーバの開発に取り組み、FileMaker Pro15 Advancedのライセンス契約を行い、開発用データベースクライアントとWebデータベースサーバアプリケーションの試行を図った。3)教員養成および養護教諭養成におけるカリキュラムに関する先行研究をさらにサーベイし、本研究の有効性と位置づけについて検討した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
勤務校の変更により、当初の計画の再検討が必要になった。教育実践構造可視化サーバの運用に関し、養護教諭に求められる高い専門性と実践力とは何かを明確にする作業に重点を置き、システムの活用方法について見直した。これをふまえて、養護学を構築するための内容と方法を洗い出し、理論的背景を抑えた上で、養護教諭の専門性を支える「養護学」の学問構築の一助となるモデルの提案を進めたい。そして、学会発表ならびに学会誌への投稿をめざし、最終的に報告書としてまとめていきたい。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度になるため、次のような計画で今後研究を進めることになる。学問を構築する手順を見直して改善を図り、「養護学」のモデルを提案したい。そこで以下3点について検討する。1)養護教諭の実践場面で取り扱う内容を子どもの認知に即して再構成するということに関して、教科内容学の理論的背景を基に精度を高めたい。そこで、日本教科内容学会において本研究の成果を発表し、養護教諭の教育実践のあり方が教科内容学の視点から捉え直すことの妥当性と改善点を確認する。2)子どもの認知的活動について、認知科学や学習科学、社会的構成主義の考え方を適応し、内容を創り出すプロセスを検討する。ベースになるスキーマ理論は、学習指導要領の改訂で検討されている見方・考え方の視点との関連が伺えるため、議論の動向を逐次追っていく。3)日本養護教諭教育学会や日本教科内容学会等における教員養成カリキュラムのあり方について整理し、本研究のめざす養護学の構築への活用を検討する。また、本研究が目指す「養護学」のあり方と日本教育保健学会の理念には重なりがみられると考えるため、共通点と相違点を整理し、本研究の位置づけを明確にする。4)本研究がこれからの養護教諭に求められる資質・能力を育むためにどのように貢献できるかについてまとめる。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成27年度の計画で積み残しのあったシステム開発の実装に向けて、FileMaker Pro15の年間ライセンス契約の更新を行い、開発用データベースクライアントとWedデータベースサーバアプリケーションの導入を行った。また、本研究に関わるデータのアプトプットのための複合機とアナログデータのデータベース化を図るためのスキャナを購入した。さらに、研究成果の発表のための学会出張も行った。これらは、平成28年度の研究遂行のために必要な経費にあたり、計画的な使用の実現が図られた。次年度使用額が生じた経費に関しては、当初の計画に比べて、最終年度において研究成果の公表を増やす予定であることと、構築したシステムの改善を図るために必要になる経費のために使用することを目的としている。
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次年度使用額の使用計画 |
研究成果の発表に向けて、学会発表と論文投稿に注力したい。そこで、学会参加費や出張経費として使用することになる。また、成果をまとめて報告書を作成するための印刷費や研究に協力していただいた関係者への報告書の郵送等に使用する計画である。
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