最終年度は、養護教諭の高度な実践力を育成する核となる養護学の構築を目指して、養護教諭の見えにくい教育実践を可視化するシステムについて検討と試作を行った。データベース化した情報は、①養護教諭を支える諸学問の体系化された内容、②養護教諭が対面する多様な実践場面で扱う内容、③②の場面における子供の既習内容や生活経験の3点である。①②と③を関連付けることによって、子供の世界と学問の世界を結びつける④新たな内容を創り出すことができる。この④を探るための足場がけとなるのが本システムの特徴である。②と③の部分は、養護教諭の実践場面で起こることであり、この記録は、研究協力者の養護教諭によって逐次入力を行いやすいようにした。これらの蓄積したデータは、4つの手順でシステム運用を図ることとした。(1)①②③の情報をもとに、養護教諭の教育実践をリスト化する、(2)(1)から場面を選択すると、選択場面に関連する①と②が要素として浮上する、(3)(2)で選択した場面における③と考えられる要素が顕在化する、(4)(2)の要素を(3)の要素に応じて変換させることで④を明確にする。(4)は、システムが行うのではなく、養護教諭の専門性によって最終的に判断することになり、ここが、養護教諭を支える学問領域の軸となる養護学を創り出す科目内容構成として重要な部分であることが明らかになった。 3年間を通じて、養護教諭の教育実践を創り出す要素とその構造について検討した。教科内容学や学習科学の視点から、養護教諭の教育実践場面における内容構成を捉え直し、子供の認知に即して新たな内容を再構成する力を養成段階から育成するため、科目内容構成の理論化を目指してきた。養護教諭の専門性を支える学問領域の軸となる養護学の構築は急務の課題であり、その方法論を示すことができた。今後も養護学の構想に向けて改良を重ねていきたい。
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