本研究では、自閉症スペクトラム障害(以下ASD)に特異的な脳形態、脳機能、およびそれらと認知機能との関連を解明することを目的とした。 2年間の研究期間を通じて、ASD児・者60名、定型発達児・者150名から、データ収集を行った。取得データは、質問紙により、生活習慣データ、各種心理尺度のデータ収集を行った。認知機能に関しては、対象者の年齢に応じた知能検査により、IQ、および実行機能について、行動データを取得した。脳形態、脳機能については、磁気共鳴画像法(MRI)による、三次元T1強調画像、拡散テンソル画像、安静時脳活動などのデータを取得した。研究計画では1年でデータ取得を終え、解析を行う予定であったが、ASD群のリクルート、およびデータ取得に時間を要したため、ASD群と定型発達群の比較検討については、今後行う予定である。 研究成果としては、定型発達児を対象とした認知機能パターンと局所灰白質量との関連について解析を行い、言語性IQと動作性IQの個人内差と右中側頭回から上側頭回にかけての局所灰白質量との関連が見出された。この結果については、国際学会にて発表後、国際論文に掲載された。また、認知機能と白質の微細構造との関連について、拡散テンソル画像より算出した拡散異方性(Fractional anisotropy; FA)と認知機能の性差について検討を行い、脳梁におけるFAと言語性IQにおいて性差が認められた。この結果については、国際学会にて発表を行った。
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