研究課題/領域番号 |
15K17420
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
三盃 亜美 筑波大学, 人間系, 助教 (60730281)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 非語彙処理 / 系列処理 / 漢字二字熟語 / 音読 |
研究実績の概要 |
本研究は、発達性読み書き障害児者の漢字単語音読について、従来のスクリーニング目的の検査ではなく、指導法の選択・考案に直接つながるアセスメント目的の検査バッテリーの開発を目指した基礎的研究である。平成27年度の計画では、健常成人を対象に、漢字単語の音読における単語属性効果を検討する音読実験を行い、漢字単語の音読モデルを提案することが目的であった(研究1)。先行研究では、漢字二字熟語の音読における系列的な非語彙処理(1文字ずつ音に変換する)の実在性が十分に検討されていなかった。この問題を明らかにするために、健常成人を対象に、漢字二字熟語の音読における非典型的な読みの位置効果(position of atypicality effect)を検討した。その結果、1文字目に非典型的な読みがある場合においてのみ、典型語と非典型語の音読潜時に有意差が認められた。すなわち、非典型的な読みの位置効果(position of atypicality effect)が観察された。この結果は、英単語の音読における不規則な読みの位置効果(posisiont of irregularity effect)に対応する。したがって、漢字二字熟語の音読においても、系列的な非語彙処理が存在するのではないかと思われた。調べた限り、先行研究における漢字二字熟語の音読モデルでは、系列的な非語彙処理ではなく、並列的な非語彙処理が想定されている。以上より、本研究の意義・重要性は、漢字単語の音読においても、アルファベット語圏同様に、系列的な非語彙処理を想定した音読モデルを提案する必要があることを示した点である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成27年度の目的を達成することができ、現在、国際学術誌への投稿準備を行っている。また、平成28年度の研究計画をを研究協力者と協議し、典型発達児を対象とした漢字二字熟語の音読に関する予備実験を終え、国内学術誌への論文掲載が受理された。したがって、本研究課題の進捗状況は、概ね順調であると思われる。
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今後の研究の推進方策 |
今後、平成27年度の実験結果に基づいて、漢字単語の音読モデルを精緻化する。さらに、平成28年度の研究計画に沿って、研究協力者との協議を続けながら、典型発達児童生徒、発達性読み書き障害のある成人および児童生徒を対象とした音読実験を行い、漢字単語の音読に関する発達、および、その障害特徴を明らかにしていく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
同一所属機関の研究協力者から実験に必要な器材を一部借りることができ、購入する必要がなくなったため、当初の計画よりも、物品費の支出が少なかったからである。
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次年度使用額の使用計画 |
平成28年度の音読実験・調査に必要な器材(例:ストップウォッチ、ICレコーダーなど)と検査(例:RCPM、SCTAW、読み書き検査など)を購入する予定である。
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