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2016 年度 実施状況報告書

自閉スペクトラム症児における協同活動の特徴とその発達支援

研究課題

研究課題/領域番号 15K17421
研究機関山梨大学

研究代表者

吉井 勘人  山梨大学, 総合研究部, 准教授 (30736377)

研究期間 (年度) 2015-04-01 – 2018-03-31
キーワードASD児 / 協同活動 / 参与観察
研究実績の概要

ASD児における言語を介した協同活動の特徴を明らかにすることを目的として、半構造化場面における仲間との相互作用の分析の研究を行った。言語表出の可能なASD児を対象として、魚釣り活動を設定し、ASDの子ども同士の相互作用の中で、言語を介した協同活動がどのように成立するのかを縦断的な視点から検討した。特別支援学校の小学部に在籍する、自閉症の男児2名(A児とB児)を対象とした。生活年齢は2名とも9歳台、精神年齢は、A児が5歳台、B児が4歳台であった。2名は、多語文による言語表出が可能であった。観察は、3カ月に1回の頻度で、計3回実施した。手続きとして、「魚釣りパズル」を用いて、二人の間に釣竿を1本置き、子ども同士で魚釣りを行うように指示した。1、2回目のVTR記録を分析対象として文字に書き起こした。Warneken et al(2006)を参考に、①目標の共有と役割遂行(釣竿の受け渡しによる役割交替)、②相互支援(仲間への援助)に該当する行動のコーディングを行った。その結果、1回目では、A児が単独で釣りを行い、B児がそれを見ることが多かった。目標の共有と役割遂行では、釣竿を無言で手渡す非言語的な役割交替が生起した。2回目は、1回目よりも役割交替が増加して、交互に釣りを行った。目標の共有と役割遂行としては、A児が言語で「貸して」と釣竿を要求してB児が手渡す、A児が「はい、(B児も)釣ってもよし」と釣竿を譲り、B児が応答して釣りを行うことがみられた。このように言語を介した役割交替が成立した。加えて、B児が魚を釣る役割の時に、A児が言語で援助するといった相互支援も生起した。以上より、ASD児では、相互支援は十分に生起しないものの、それは、活動を繰り返すことで改善される可能性があること、言語は、目標の共有と役割遂行、そして、相互支援の成立において重要な役割を果たすことが示唆された。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

平成28年度は、言語による相互作用の可能なASD児のペア2組(4名)による半構造化場面での協同活動の特徴に関する検討を縦断的に実施した。半構造化場面として、交互に役割交替を行う「魚釣りゲーム」と共同で制作する「船の色塗り課題」を3カ月に1回の頻度で3回実施した。2場面とも、相互作用を発話、視線、動作などを逐一文字に書き起こした。そして、①目標の共有と役割遂行(釣竿の受け渡しによる役割の交替)、②相互支援(仲間への援助)の観点から、量的・質的な分析を実施した。
また、協同活動の遂行に困難を示す特別な支援を要する子どもに対して、その遂行を促進するために、3名の子どもグループによる共同での制作遊び場面を設定して、場面をルーティン化した支援を行った。事前評価、支援期、事後評価の3期に分けて、関連のある発話の維持の平均生起頻度、対象児の発話機能の生起率、三者間の笑顔の連続生起率を算出して、その結果を基に、協同活動の獲得過程と支援方法の適切性についての検討を行った。
平成28年度における研究成果は、日本発達心理学会でポスター発表した。

今後の研究の推進方策

平成28年度は、言語による相互作用の可能なASD児のペア2組(4名)による半構造化場面での協同活動の特徴に関する検討を縦断的に実施した。平成29年度も同一のペアに対して継続して観察を実施する。加えて、精神年齢、発達年齢との関連を検討する。
協同活動の支援研究としては、ASD児2名のペアを対象として、協同で調理する活動をスクリプトとして構成し、スクリプトを用いた支援を実施し、協同活動の獲得過程、その汎用性の範囲や程度を検討する。そして、スクリプトを用いた支援の支援可能性について検討する。
研究成果については、日本特殊教育学会、日本発達心理学会でポスター発表する。また、特別な支援を要する子どもに対して実施した協同活動の獲得を目的とした支援については研究紀要にまとめて公表する。

  • 研究成果

    (3件)

すべて 2017

すべて 学会発表 (3件)

  • [学会発表] 自閉スペクトラム症児の言語を介した仲間との協同活動の特徴―「魚釣りゲーム」での相互作用の分析を通して―2017

    • 著者名/発表者名
      吉井 勘人
    • 学会等名
      日本発達心理学会第28回大会
    • 発表場所
      広島大学(広島県)
    • 年月日
      2017-03-25 – 2017-03-27
  • [学会発表] 典型発達幼児同志の協同活動の発達アセスメントと支援(3)―3-5歳児の課題差における会話と注視に関する基礎的研究―2017

    • 著者名/発表者名
      板倉達哉・吉井勘人・若井広太郎・仲野みこ・長崎勤・熊谷恵子
    • 学会等名
      日本発達心理学会第28回大会
    • 発表場所
      広島大学(広島県)
    • 年月日
      2017-03-25 – 2017-03-27
  • [学会発表] 追悼;Bruner,J.,S.が探した「心」は何だったのか?―共同注意、フォーマット、ナラティブの「発見」と支援を通して―2017

    • 著者名/発表者名
      長崎勤・吉井勘人・板倉達哉・仲野真史・田島信元
    • 学会等名
      日本発達心理学会第28回大会
    • 発表場所
      広島大学(広島県)
    • 年月日
      2017-03-25 – 2017-03-27

URL: 

公開日: 2018-01-16  

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