本研究の目的は、弱視学生が求める合理的配慮の内容を具体化した上で、それに応じた学習支援サービスに対する健常学生の態度と、それを受容的に変容させる情報が何かを、補助具活用場面との関係から検討し、弱視学生支援システムを整備・拡充するための理解啓発プログラムを開発する基礎資料を得ることであった。このため、H27年度は弱視学生の支援サービスについての実態調査を実施し、H28年度は弱視学生支援サービス尺度(授業支援尺度・成績評価尺度・組織支援尺度)を開発した。 最終年度となるH29年度は、上記の尺度を活用し、弱視学生の補助具活用の違いが支援サービスに対する健常学生の態度に及ぼす効果を、支援サービス内容ごとに検討した。このため、まず弱視学生の読み、書き、移動の様子を視覚的に説明するための刺激条件、すなわち、一般補助具条件(タブレット)、伝統的補助具条件(弱視レンズ)、補助具なし条件(接近視)を作成し、それらを健常学生(N=268)に無作為に提示し、質問紙への回答を求めた。 下位尺度ごとに各条件の得点を比較したところ、授業支援尺度と組織支援尺度では補助具なし条件の方が他の条件よりも有意に得点は高く、受容的態度であることが見出された。これは弱視学生が目を細めてものに近づく様子が見えにくさを伝えやすいためと推察できた。一方、成績評価尺度では、一般補助具条件が他の条件よりも得点が低く、拒否的態度であることが見出された。タブレットは一般家電であるため、見えにくさを補うための補助具類としては認知されにくいため、特に健常学生の競争意識が働きやすい成績評価に関わるサービスについては、理解が得られにくかったものと推察できた。 本研究により、弱視学生が支援サービスに対する健常学生の理解を得るためには、支援内容ごとに見えにくさを伝えるための手段を変える工夫が必要であることが示唆された。
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