調査協力校にて実践した教科は英語,数学,国語,理科,倫理,世界史,地理,家庭科である.UDLの導入のプロセスは「UDLの枠組みの導入とマインドセットのシフト」,「ガイドラインに基づいた学習者が自ら舵取りして学ぶためのオプションの導入」,「GOALとWHYを示し学習者の学びの真実味を高める」の3つの段階に沿って実施された. 「UDLの枠組みの導入とマインドセットのシフト」の段階では,教員全体でUDLについての研修を実施し,生徒の学びの何を改善できるかについて全体での協議を複数回実施した.個別の教員との面談も定期的に実施し,それぞれの教科でどのような取り組みが可能かについても継続的に検討し,UDLを授業に取り入れる準備を実施した.その結果,当初戸惑いを感じていた教員にも,スムーズにUDLを理解し,UDLを導入するためのマインドセットが組み込まれた. 「ガイドラインに基づいた学習者が自ら舵取りして学ぶためのオプションの導入」段階では,生徒が自ら舵取りして学べるために,UDLガイドラインに基づいて取り組みのための,認知のための,行動と表出のための多様な方法について検討し,授業の際に利用可能なオプションを用意した.このことにより,授業に積極的に参加しない生徒,授業に参加できない生徒,授業内容を十分に理解するところまで到達できない生徒が減少し,一部の教科では期末テスト等の得点も向上した. 「GOALとWHYを示し学習者の学びの真実味を高める」の段階では,単元のゴールをはっきりと明示し,なぜこのゴールを学ぶのかについても生徒が納得のできるような説明を実施した. 成果としてこうした導入のプロセスを集約し,UDL実践のためのプロトタイプを作成した.この成果により,高等学校をはじめ日本の学校にUDLを導入する際の手順と,その実践例が明確となり,今後UDLが広く普及していくことが期待される.
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