研究実績の概要 |
ポリフェノールは植物の葉、茎、樹皮、果皮、種子などに多く含まれているバイオマス由来の化合物であり、抗酸化作用、抗炎症性、抗菌作用といった優れた生理活性を持つ。私は植物性ポリフェノールに多く含まれる官能基であるガロール基に着目し、本年度は、これを側鎖にもつ新規ポリマー、ポリビニルガロールの合成経路を確立した。まず市販の3,4,5-トリメトキシベンズアルデヒドをWittig反応でトリメトキシスチレンへと変換した。これをリビングラジカル重合の一種である可逆的付加開裂連鎖移動(RAFT)重合によって高分子量化した。三臭化ホウ素でメトキシ基を脱保護することで、ポリビニルガロールの合成に成功した。 RAFT重合に用いる連鎖移動剤を検討した結果、cyanomethyl dodecyl trithiocarbonateが最適であった。モノマー:連鎖移動剤:開始剤=30:1:1で重合した場合は、約10時間で反応が完了した。この時のモノマー転化率と合成されたポリマーの分子量を追跡したところ、直線関係が認められたことから、本重合反応のリビング性を確認した。モノマーと連鎖移動剤の仕込み比を変えることで、4千から6万の範囲で分子量を精密に調節することができた。 用いるモノマーを4-メトキシスチレンまたは3,4-ジメトキシスチレンに変更することにより、同様の合成経路で、それぞれポリビニルフェノール、ポリビニルカテコールも合成することができた。本年度の研究実績によって、3種類のポリフェノール模倣高分子を分子量を制御して自在に合成できる基盤が整った。
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