ポリフェノールは植物の葉、茎、樹皮、果皮、種子などに多く含まれているバイオマス由来の化合物であり、抗酸化作用、抗炎症性、抗菌作用といった優れた生理活性を持つ。植物性ポリフェノールの化学構造から着想を得た新たなポリマー、ポリビニルガロール(PVGal)のホモポリマーの合成法を初年度に、その共重合体の合成方法を昨年度に確立した。今年度はPVGalとオリゴエチレングリコールを側鎖に持つモノマーの共重合体を合成し、これが水溶液中でナノ粒子に自己集合することを見出した。近年ブロック共重合体が自己集合してできる高分子ミセルに薬物を内包させ、患部まで送達するDDS(Drug Delivery System)技術が大きく進展している。通常大きな副作用を伴う抗がん剤などにDDS技術を適用することで副作用を大幅に低減できるため、未来型の治療として今後もますます重要になると予想される。一方で、健常な生体内では酸化反応と抗酸化反応のバランスがとれているが、これが酸化反応に傾くと、脂質、タンパク質、糖、核酸などを酸化変性させ、様々な病気の原因となることが知られている。すなわち,血中では常に酸化ストレスが存在しており、薬剤の中には酸化耐性の低いものも少なくない。そのため本研究で得られたポリフェノール模倣高分子を外殻構造にもつナノ粒子は内因性の酸化ストレスから内包する薬物を保護する効果があり、新規機能性ナノキャリアとしてのさらなる展開が期待できる。
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