研究課題/領域番号 |
15K17441
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研究機関 | 横浜国立大学 |
研究代表者 |
伊藤 傑 横浜国立大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (80724418)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | ホスト-ゲスト / 不斉認識 / キラルジアミン |
研究実績の概要 |
本研究では、ピンセット型分子によるカーボンナノチューブの選択的可溶化に基づく高純度化、特に、キラルな分子ピンセットによるらせん型カーボンナノチューブの右らせん型と左らせん型の分割を目的としている。
平成27年度の研究では、高い不斉認識能を有するキラルな分子ピンセットを創製することに成功した。まず、4,6-ジベンゾフランジアルデヒドに対するジエチル亜鉛の不斉付加反応により得たキラルジオールをジアミンへと変換し、各種芳香族アルデヒドとのイミン形成を行った後に還元することで、異なるπ平面部位を有する種々のピンセット型キラルジアミンを合成した。ラセミ体のマンデル酸をモデル化合物として用い、各種ピンセット型キラルジアミンによる不斉認識挙動をNMR、UV、蛍光スペクトルの測定から評価した。その結果、1H NMRスペクトルにおいて、ピレン環を有するピンセット型キラルジアミンでは、マンデル酸に対し4分の1倍モル量のみのキラルジアミンを用いた場合に両エナンチオマーのシグナルが大きく分離したのに対し、アントラセン環を有するピンセット型キラルジアミンでは混合比によらずシグナルが分離することを見出した。このように、ジベンゾフラン骨格を有するピンセット型キラルジアミンの不斉認識能がπ平面部位に大きく依存することは、らせん型カーボンナノチューブの不斉認識を行う上で重要な知見である。
一方、ピンセット型分子によるカーボンナノチューブの高純度化に関しては、ジベンゾフラン骨格を有するキラルジアミンと長鎖アルキル基を有する芳香族ジアルデヒドとの自己組織化によるカーボンナノチューブの可溶化について検討を行ったが、現在のところ満足のいく可溶化条件を見出せておらず、さらなる検討が必要である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ピンセット型キラルジアミンが高い不斉認識能を有することを見出しただけでなく、芳香環の違いによって不斉認識挙動が大きく異なるという当初想定していなかった興味ある知見を得ることができた。一方、ピンセット型キラルジアミンが高い不斉認識能を有することが明らかとなったため、カーボンナノチューブの可溶化については、平成27年度の当初計画に記載したピンセット型キラルジアミンを単独で用いる手法ではなく、平成28年度の計画とした自己組織化を利用した手法の一部を先に検討した。以上を総合すると、本研究課題は概ね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度は、当初計画通り、ピンセット型キラルジアミンとの自己組織化に用いる各種ジアルデヒドを合成し、カーボンナノチューブの精製に向けた検討を順次行う。また、平成27年度の研究で得られたピンセット型キラルジアミンの興味ある不斉認識挙動についても、各種スペクトル及び会合定数の測定を行うことでその詳細を明らかとする。
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