次世代発電装置として期待されている固体酸化物形燃料電池(SOFC)の作動温度600℃以下での発電性能を改善するため、低温焼結プロセスを用いて反応性の高いナノ構造を有する空気極支持型セルの開発を行った。 まず支持体となるLSCF空気極微粉末を、共沈法によって合成し、ボールミル粉砕、仮焼きを経てディスク状にプレス成形した。530℃焼成することで部分的にLSCFを結晶化させ電気伝導性を持たせた。この易焼結性のLSCF空気極支持体上に、特異的に反応性の高いGDCナノキューブを電気泳動法によって集積した。このGDCナノキューブ薄膜は膜厚2μmと非常にち密な薄膜であることをSEM観察によって確認した。易焼結性のLSCF支持体とともに、このGDCナノキューブ薄膜を1000℃で低温焼結することで、膜厚1μmのGDC薄膜電解質を作製することに成功した。一方、LSCF支持体成形時に粉末試料を用いているために、LSCF空気極支持体表面は数~十数μmサイズの粒界があり、その粒界由来のクッラクが生じていた。このクラックを除去するため、LSCF分散液をスピンコートしLSCF支持体表面の穴埋め、平滑化するLSCF緩衝層を作製した。このLSCF分散液は、空気極支持体作製に使用したLSCF微粉末をポリアクリル酸アンモニウム系分散剤、カーボンブラック造孔剤とともにボールミルすることで調製した。このLSCF緩衝層はセル作製時は緩衝層ととして機能するが、共焼結後は造孔剤の燃焼除去によって多孔質の反応層となる。このLSCF緩衝層によってGDC電解質薄膜のクラックは飛躍的に減少したが、H2、O2ガスを完全に分離することはできなかった。これは電気泳動に用いたGDCナノキューブ分散液中のGDCナノキューブの粗大なニ次粒子を除去することで改善すると期待される。
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