研究課題/領域番号 |
15K17444
|
研究機関 | 首都大学東京 |
研究代表者 |
近藤 敏彰 首都大学東京, 都市環境科学研究科, 助教 (20513716)
|
研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
|
キーワード | 陽極酸化ポーラスアルミナ / 表面プラズモン / ナノフォトニクス |
研究実績の概要 |
H27年度は,主に以下の項目に関して検討を行った. [1] 高アスペクト比同軸ナノケーブルの形成に関して検討を行った.自己組織化材料の一つである陽極酸化ポーラスアルミナを出発構造とし,ポーラスアルミナのナノ細孔の高アスペクト比化を行うことで,同軸構造の高アスペクト比化を行った.それに伴い,同軸構造を構成する外部導体,誘電体層,そして,内部導体の形成条件の最適化を行った.検討の結果,高アスペクト比同軸ナノケーブルが得られた. [2] 可視光の伝搬効率が優れた同軸ナノケーブルの形成に関して検討を行った.予備的な検討において,Auからなる同軸ナノケーブルは可視光の伝搬効率が低く,同軸ナノケーブルを集光デバイスへ応用する上で可視光伝搬の効率化が大きな課題であった.本年度は,Auと比較して可視光に対し低損失なAgからなる同軸構造の形成を目的に,Agの電析法に関して詳細な検討を実施した.検討の結果,Agを内部導体とする同軸構造の形成が可能となり,可視光伝搬の効率化が確認された. [3] 同軸ナノケーブルのナノ集光デバイスへの応用に関して初期的な検討を実施した.同軸ナノケーブルを用いて可視光をナノ空間に導き,光化学反応を誘起させた.検討の結果,同軸ナノケーブルを集光素子として用いることで,光波長よりも十分に小さい領域において,光化学反応の誘起が可能なことが確認された. 得られた研究成果は,国内外の学術会議にて報告した.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画が順調に遂行されているため.
|
今後の研究の推進方策 |
H28年度は,主に以下の項目に関して詳細な検討を実施する. [1] 同軸ナノケーブルの集光効率の改善に関して検討を行う.開口径がナノメートルスケールの同軸ナノケーブルは,開口径の微細さから同軸構造への入射光の光量は小さく,集光効率は低い.一方,テーパ構造の適用によれば,同軸ナノケーブルの片側の開口径を光波長程度に保ちながら,集束側の開口径をナノサイズ化することができる.これにより,同軸構造への入射光量の改善がなされ,効率的な集光が可能になるものと期待できる.テーパ型同軸構造の形成は,陽極酸化ポーラスアルミナの幾何構造を精密に制御することで行う.光伝搬特性は,透過および反射スペクトル測定を行うことで評価する.伝搬光のモード,集光スポットの直径などの集光特性は,FDTDもしくはRCWAシミュレーションを行い解析する. [2] 同軸ナノケーブルにもとづいた光記録システム,および,熱アシスト磁気記録システムの構築に関して検討を実施する.光記録システム構築の初期的な検討として,同軸ナノケーブルアレー上に記録層を直接形成し,本光記録システムの動作を検証する.誘電体層および記録層の形成条件に関して詳細な検討を行う.記録層には,スパッタリング法により形成されたGeSbTe層を採用する.熱アシスト磁気記録システムでは,同軸ナノケーブルにより集束された光で高安定磁気粒子を局所的に加熱し,磁界を印加することで記録を行うが,記録層にはFePd系薄膜を採用する.
|
次年度使用額が生じた理由 |
当初予定していたAl同軸ナノケールの作製手法では,同軸構造の形成が困難なことが初年度の検討結果より明らかとなり,同軸構造の新たな作製手法を構築するための予備検討を実施する必要が生じた.これに伴い,研究計画にあるレーザー装置のスペックの決定が遅れて購入することができなかった.以上の理由で,次年度使用額が生じた.
|
次年度使用額の使用計画 |
レーザー装置と光学素子のスペックが決定でき次第,購入する予定である.
|