ナノ粒子を使った光熱変換の研究では、金属的な遷移金属窒化物が高い太陽光吸収特性を持つことを理論計算によって示してきた。また実験では、金属的な遷移金属窒化物の一つである窒化チタンナノ粒子が、実際に高い太陽光吸収特性を持ち、特に液体の蒸発において高い効率を示すことを本科研費の間に示してきた。 今回実験で使用している窒化チタンナノ粒子は粒子径が数十ナノメートルと極めて小さい。一方で、窒化チタンナノ粒子が高い光吸収特性の示す要因となっているプラズモン共鳴は粒子の形状は表面の酸化状態などによって大きな影響を受ける。 そこで、今年度は透過電子顕微鏡(TEM)で電子エネルギー損失分光(EELS)観察を行うことで、窒化チタンナノ粒子特性並びに表面の酸化状態を調べ、実際に使用している窒化チタンナノ粒子のプラズモン共鳴についてより深い理解を得ることを目的とした。 窒化チタンナノ粒子のプラズモン共鳴は数eVの付近にピークとして現れることが予想されたため、実験では京都大学微細解析プラットフォームにあるTEM(モノクロメータ搭載低加速原子分解能分析電子顕微鏡 / 日本電子 JEM-ARM200F)を使用した。本TEMはゼロロスピーク近傍の約1eV付近から、EELSスペクトルを測定可能な仕様になっている。測定では、熱プラズマ法によって作製した窒化チタンナノ粒子のEELS観察を行った。予想通り、電子線励起においても光励起と同様のプラズモンピークが観測された、またピーク位置の粒子依存性を調べると、粒子が大きくなるにつれてピーク位置がブルーシフトする現象が見られた。これは通常とは異なる傾向であるが、電磁場シミュレーションから粒子表面に酸化膜がついていることを考慮すると説明でき、実際にTEM内で元素マッピングを行うと酸化膜の存在が確認できた。窒化チタンナノ粒子のプラズモンに関するこのような詳細な解析はこれまで報告がなく、今後外部発表を行う予定である。
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