環境に捨てられている室温~150℃の低温排熱エネルギーを利用価値の高い電力へと変換する技術の実現が期待されている.排熱発電技術として,ゼーベック効果を用いた熱電変換と,熱から機械エネルギーに変換する熱機関を介した電気エネルギーへの変換技術が挙げられる.本研究は,後者の変換技術を実現するため,ビルディングブロックである超軽量かつ集積可能な熱機関を創製することを目的としている.前年度までに,研究代表者は,多層カーボンナノチューブ(MWNT)低密度機能性自立膜を利用した新規熱機関を提案し熱機関動作を実証した. 今年度は,MWNT軽量自立膜から構成される上記新規熱機関を用い,機械エネルギーから電気エネルギーへの変換を試みた.作製した短冊状のMWNT自立膜(Ni薄膜と積層化)を熱源上に設置すると継続的に機械伸縮動作を示し,機械運動する自立膜の一部をSiウェハ表面と動的接触させることにより,外部回路へ電力出力することができた.この発電原理は,MWNTとSiとの仕事関数差を駆動力とした界面電荷分離によるものだと考えられる.一方で,熱源温度150℃で最大出力電力が約30 μWと微小なため,今後は高出力化技術の開発が必要である. さらに,MWNT軽量自立膜表面に化合物太陽電池薄膜を形成し,可視光による光電変換を確認した.また,短冊状に成形した本積層自立膜を熱源上に設置したところ,熱機関動作を示した.つまり,本自立膜は,(1)太陽光スペクトルの赤外光領域(通常の太陽電池の透過損失領域)による熱(赤外光)→機械→電気変換と,(2)可視光領域による光→電気変換,の両立が可能な高出力エネルギー変換素子のビルディングブロックとして期待できる.
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