研究課題/領域番号 |
15K17449
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
山本 英明 東北大学, 学際科学フロンティア研究所, 助教 (10552036)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 多点電極アレイ / 培養神経回路 / インピーダンス測定 / 生体絶縁膜 / ナノ加工 |
研究実績の概要 |
培養神経回路の機能(活動)は,パッチクランプ法,細胞外電位測定法,蛍光Caイメージング法などの手法を用いて計測することができる.このうち細胞外電位計測法は,集積化電極基板(multi-electrode array; MEA)を用いて神経細胞の活動電位を計測する手法である.集積化電極基板での測定は細胞に非侵襲であり時間分解能が高いため,基礎研究や薬理研究などで幅広く用いられているが,計測される信号は細胞内での電位変化(約100 mV)に比べて3~4桁ほど小さい.この感度は,神経細胞が閾値電位を超えた際に発生させる活動電位のタイミングを調べるのには十分であるが,閾値下の膜電位変化を計測することはできない.
MEAの各電極で単一神経細胞の活動を記録するためには,電極のサイズを数um程度に小さくする必要があるが,電極のサイズを小さくすると,電極インピーダンスが上昇し,信号が減少する.そこで,電極インピーダンスを上げることなく,計測面積を単一細胞計測が可能なサイズ(数um)まで微細化するために電極をナノスケールで3次元化する.
我々はこれを実現うるためのデバイスを開発し,培養神経回路での高感度計測を実証する.さらに,神経細胞のマイクロパターニング技術(APL 2011; J Neurochem 2012; Biofabrication 2014)を導入することで,電極の直上に細胞を正確に配置し,実験のスループットを向上させる.また最終年度にはこのデバイスを用いて,回路構造を規定した培養神経回路(「人工神経細胞回路」)の長期機能計測を行う.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
3次元ナノ構造電極デバイス上でラット大脳皮質神経細胞を安定に培養できることを確認した.さらに培養神経回路の計測を行い,従来デバイスの10倍以上の信号が計測できる手応えを得た. 並行して,細胞外電位計測の感度を向上するための別のアプローチに関する検討も行った.具体的には,電極上の神経細胞を絶縁性フィルムで被覆し、細胞-電極間のシール抵抗と接地点との間に直列にインピーダンスを挿入すし,シール抵抗を上げるというアイディアに基づいて実験を実施し,実際に信号が増幅できることを示した.この実験については,2016年1月に原著論文がApplied Physics Letters誌に掲載された.
電極上に神経細胞を配列させるための新規パターニング法の開発や,神経回路の構造と機能との関係を調べるための計算機シミュレーションについても研究を進め,得られた成果は原著論文や学会発表として発表した.
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今後の研究の推進方策 |
デバイス作製プロセスを簡便化するために,電極デバイスのパッシベーション膜をSiO2/SiN膜から有機絶縁膜に置き換える.有機絶縁膜上でも神経細胞が安定に培養できることを確認する.また3次元ナノ構造電極デバイス上で信号を安定に取得するために,電極構造の最適化や電極デバイス上での細胞パターニングを行う.
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次年度使用額が生じた理由 |
概ね計画通りに執行したが,当該研究課題を推進するために残額で購入できる物品が無くなったため,次年度予算と合算して使用することにした.
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次年度使用額の使用計画 |
次年度使用額は年度予算の1%以下であり,使用計画に変更はない.
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