グラフェンメタマテリアルの動的光制御に必要となる実験系の構築に取り組んだ。具体的には、デジタルマイクロミラーデバイス(DMD素子)を用いて、制御用PCからの映像信号に応じて生成した任意波長・任意形状の2次元光パターンを試料表面に縮小投影する装置を開発した。装置開発にあたりまず、DMD素子が試料表面に生成する2次元光パターンの光学特性を明らかにするため、結像光学に基づく理論解析に取り組んだ。ここでは、縮小光学系の点像分布関数をあらかじめ求めておき、DMD素子が生成する様々な2次元光パターンとの畳み込み積分を行うことで、試料表面での結像特性について評価した。実際の装置構築に使用したレンズの特性から、光学系のNAが0.06、光源の波長が436nmの場合について、DMD素子1ピクセル(9.8μm四方)が試料表面に作り出す光パターンは、約600nm四方となることが明らかとなった。これらの解析結果を基に、高圧水銀ランプを光源とするDMD素子、結像および対物レンズ、xy自動ステージ、CMOSカメラ等を用いて装置の構築を行った。また、明瞭な2次元光パターン生成に重要となる光照射中のピントずれに対応するため、CMOSカメラ像のコントラスト値を基にzステージを自動制御する、いわゆるコントラスト法によるオートフォーカス機構を独自の制御用プログラム開発により達成した。g線フォトレジストを用いて本装置の光照射性能を評価したところ、500μm四方の面積に対して、各部に様々なサイズ・形状を有する任意の2次元光パターンの光照射ができることを確認した。これらの実験結果は、理論解析で得られた予測値ともよく一致し、グラフェンメタマテリアルにおける光励起ホットキャリア注入実験に対する有用な知見を得た。
|