研究実績の概要 |
本研究では、電極化した後の仕事関数を制御できる、有機半導体デバイス高性能化のための新しい銀ナノ粒子インクを開発することを目的とする。仕事関数制御によって、有機半導体とのエネルギー障壁を低減することができ、最終的には、有機トランジスタの低電圧動作や集積回路における寄生抵抗低減などデバイス高性能化につなげる。 これまでの先行研究では、エネルギー障壁を低減するための蒸着電極の表面処理法(Nature Materials, 7, 216)や、エネルギー障壁が小さい電極材料や酸化物を蒸着積層する電極構造(Applied Physics Letters, 90, 073504)が報告されているものの、近年開発が進む、印刷可能な電極材料(例えば金属ナノ粒子インク等)を用いて有機半導体とのエネルギー障壁を低減できるような界面設計手法に関しては、研究が進んでいないのが現状である。本研究ではこれらの界面設計手法の確立を目的として研究を行った。 H28年度は、新規に合成した銀ナノ粒子インクを用いて有機トランジスタを作製し、単独の有機TFTの特性評価及び性能改善を行い、その結果をフィードバックさせさらに銀ナノ粒子インクの改良を行った。開発した銀ナノ粒子インクを用いてP型有機TFTを作製した結果、従来の銀ナノ粒子インクを用いた場合と比べ、有機TFTの特性を大きく向上させることができた。種々のデバイス構造最適化を試みたところ、界面に存在する残存保護分子の影響で仕事関数を変化させていることが分かり、目的の効果が得られていることが確認できた。しかしながら、デバイス構造の最適化とインク改良にまだ改善の余地があり、今後はこれらをさらに最適化することでデバイス特性の改善を試みる予定である。
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