研究課題/領域番号 |
15K17463
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研究機関 | 国立研究開発法人物質・材料研究機構 |
研究代表者 |
永村 直佳 国立研究開発法人物質・材料研究機構, 先端材料解析研究拠点, 研究員 (40708799)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 有機分子半導体 / 電界効果トランジスタ / オペランド分析 / 放射光 / 顕微分光 / 界面 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、構造の柔らかさと分子設計による機能の多様化に利があるπ電子有機系分子薄膜をチャネルとして活用した有機半導体電界効果トランジスタ(OFET)について、まだ知見の乏しいデバイス動作時の界面や欠陥近傍でのキャリアの振る舞いを、研究代表者らが開発してきた3次元走査型光電子顕微分光装置"3DnanoESCA"によって明らかにすることである。初年度であるH27年度中はほぼ予定通り、以下の項目を行った。 (1) バイアス電圧印加下でのOFETチャネル内ピンポイント測定…C10DNBDT分子で作製したOFETについて輸送特性とチャネル内のピンポイント分光測定の同時測定を行い、集光X線照射下でも非破壊X線分析が可能なことが示された。 (2) OFETチャネル内ポテンシャル空間分布テスト測定…集光したX線をスキャンし、チャネル内部のC 1s内殻スペクトルのマッピングを行った。積層欠陥をまたいでポテンシャル勾配が変化することが示唆される結果が得られた。また、側鎖の炭素数やチャネル幅を変えて測定を行い、測定可能な条件の見積もりを行った。 (3) イオン液体界面の結合状態分析…ゲート絶縁層やチャネル自体にイオン液体を利用したトランジスタも考案されており、電圧印加下での基板/イオン液体界面の状態や電荷分布の分析を行った。 (4) リチウムイオン電池有機分子正極材料の放射光EXAFS分析…有機分子をリチウムイオン電池正極材に用いた系について、nanoESCAでの電極表面状態オペランド分析を念頭においてEXAFSでLUMO準位近傍の電子状態分析を行った。 上記の成果により、論文・解説を2本出版し(2本執筆中あり)、9件の学会発表(うち招待講演4件)を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
集光X線による有機分子のダメージが懸念されていたが、大きな山場であった輸送特性とピンポイント分光の同時測定によってコンシステントな結果が得られ、C10DNBDT分子を利用したデバイスでは予定通りオペランド分析を行い、論文化することもできた。 また、次年度への展開を鑑みて、イオン液体やリチウムイオン電池有機正極活物質などのテスト分析も行うことができた。
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今後の研究の推進方策 |
今年度はほぼ計画通り進んだが、OFETのポテンシャルマッピングのテスト測定では、ピンポイント測定より集光X線の照射時間が長くかかり、C6DNBDTのように側鎖構造を変えた分子やチャネル幅が広いデバイスでは測定時のダメージが有意であったため、分子種の系統的分析に関しては厳しいと思われる。 従って、次年度は(1)耐久性の比較的強いC10DNBDT分子でのポテンシャルマッピングの再現性検証、(2)H27年度にテスト分析を行ったイオン液体や有機分子正極活物質などへの展開、を行う予定である。
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