本研究の目的は、研究代表者らが開発・改良を行ってきた放射光軟X線走査型光電子顕微分光装置の、2018年度現在でも世界随一の特長である「高い空間分解能(面内方向100 nm以下)」「オペランド(デバイス動作下)計測可能であること」を活かし、対象として特に有機半導体電界効果トランジスタ(OFET)に注目して、従来のモデルデバイスからより実デバイスに近い構造でミクロな局所電子状態特性とマクロな輸送特性を結びつけることである。 基本的には2年で実験は終了しており、 ・OFETの動作中チャネル内ポテンシャルイメージングの実現…ゲート電圧・ドレイン電圧をパラメータとして細かくふり、線形領域から飽和領域にかけてC 1sコアレベルシフトの空間分布を測定し、チャネル内のポテンシャルマッピングができた。欠陥付近や電極付近で抵抗の要因となるポテンシャルドロップが観測された。 ・本解析手法の他のデバイスへの応用…OFETの測定で得られた知見を活かし、グラフェンや遷移金属ダイカルゴゲナイドをチャネルとしたFETやGaN-HEMT素子、Liイオン電池有機半導体正極材などでも同様の分析を行った。また、測定結果として得られる3次元スペクトルイメージのビッグデータを機械学習を利用して高速情報抽出する課題にも取り組んだ。 このように一定の解析結果が得られている。3年目であるH29年度中は国際学会での発表や論文執筆など成果のアウトプットと新たな展開のための追加実験を中心に行った。
|