研究課題/領域番号 |
15K17469
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研究機関 | 広島国際大学 |
研究代表者 |
上月 具挙 広島国際大学, 工学部, 講師 (50352026)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 電子透過率 / 電子透過膜 / DLC / モンテカルロシミュレーション / プラズマイオン注入成膜法 |
研究実績の概要 |
2015年度は主にDLC膜の成膜方法の違いによる電子透過率の評価について検討した。 1. 電子透過膜の作製 DLCの成膜方法としてRFプラズマCVD法やプラズマイオン注入成膜法を検討した結果、プラズマイオン注入成膜法により成膜時の内部応力を少なくすることが電子透過膜の作製時(エッチング時の破損防止)には極めて重要であることが分かった。 2. 電子透過率の評価 電子透過率はモンテカルロシミュレーション及び実験により確認を行った。シミュレーションではDLCの密度、膜厚の違いによる電子透過率を算出した。例えば、膜厚を500[nm]、密度を1.57[g/cm3]とすれば、電子は加速電圧5kVで膜を透過し始め、18[kV]で99%が透過した。同じ密度で膜厚を50[nm]とすれば、電子は加速電圧2[kV]で膜を透過し始め、7[kV]で99%が透過した。また、密度を2.4[g/cm3]で膜厚を50[nm]とした場合、電子は加速電圧2[kV]で膜を透過し始め、9[kV]で99%が透過した。このように、膜厚を薄くすることは、電子透過率(最終的には検出画像の解像度)を上げるために非常に有効であるが、密度は電子透過率に大きく影響しないことが確認できた。さらには、電子のDLC透過後、DLCと観察試料の間に存在する水溶液の量の違いによる電子透過率を算出した。これによると、水溶液の量が電子透過率に及ぼす影響は非常に大きく、いかにして水溶液の量を減らすかが今後の検討事項として残された。実験ではSEMの電子銃にて電子線をDLC膜に照射し、それぞれの加速電圧における試料吸収電流の変化を計測することで、膜厚の違いによる電子透過率を求めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初予定していた項目はすべて行うことができた。しかし、水溶液の量が電子透過率に及ぼす影響は予想より大きく、観察試料と電子透過膜の間に存在する水溶液の量をいかにして減らすかが今後の新たな検討事項として残された。
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今後の研究の推進方策 |
当初の研究計画に加え、観察試料と電子透過膜の間に存在する水溶液の量の調整が必要となった。今後の具体的な研究計画は 1.電子透過膜のサイズと膜厚の最適化、2.生体試料を大気圧下で観察するための試料ホルダーの試作と分解能の向上、3.生体試料に及ぼす電子線ダメージの影響である。 1.ではDLCの膜厚を50[nm]とし、観察可能領域を広くするため電子透過膜のサイズを広げる工夫を行う。2.では新たな課題となった水溶液の量の調整を含め、試料ホルダーの試作を行う。3.では生体試料が死滅しないであろうと予想する加速電圧数kVによる酵母菌等の発芽観察を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
2015年度は2016年度に購入を計画していた電子銃システムを購入したため、計画額をオーバーして使用した。しかし、電子銃システムを予定より安価で入手することが出来たため、繰越額が発生した。
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次年度使用額の使用計画 |
繰越額は電子透過膜のサイズと膜厚の最適化に関する消耗品費として使用する予定である。
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