研究課題/領域番号 |
15K17472
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
田中 良典 京都大学, 工学研究科, 講師 (20534522)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | フォトニック結晶 / 太陽電池 / 電磁界解析 / 感度解析 |
研究実績の概要 |
本研究課題では、昨年度までに、厚さが数百nm~数μm程度の非常に薄いSi光起電力層をもつ微結晶Si薄膜太陽電池について、フォトニック結晶ナノ構造を用いて光吸収を増大させるための構造設計に取り組んできた。特に、フォトニックナノ構造の設計に、感度解析と呼ばれる手法を利用して検討を行い、各種透明導電膜の寄生吸収の影響を取り込み、かつ現実的に作製可能な、緩やかな側面形状をもつフォトニック結晶構造で、高い短絡電流密度を得ることに成功した。 一方、太陽光発電の分野においては、微結晶Siではなく、単結晶Siに研究の軸足が移っている。現在100~200μm程度の厚さの単結晶Si太陽電池が広く用いられているが、これを数十μm程度まで薄くすることを目指した検討が広くなされている。このような潮流を踏まえ、本年度は、厚さ20μm程度の薄型単結晶Si太陽電池の光吸収を増大させることを目指して検討を実施した。 解析モデルとして、厚さ20μmのバックコンタクト型の単結晶Si太陽電池構造を想定し、格子定数800nm、深さ600nmの円錐形状空孔の三角格子フォトニック結晶構造を表面に形成した構造を考えた。その結果、フォトニック結晶構造を形成しない構造における短絡電流密度31.9mA/cm2に対し、フォトニック結晶構造の導入により37.6mA/cm2まで、短絡電流密度を増加可能であることを明らかにした。合わせて、本設計に基づき太陽電池の作製を行ったところ、計算とよく対応する外部量子効率スペクトルが得られ、実験的にも短絡電流密度がフォトニック結晶構造のない場合の30.5mA/cm2から36.1mA/cm2への増大が確認された。この実験的に得られた短絡電流密度は、この厚さの単結晶Si太陽電池の中では、世界最大の値であるといえる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、フォトニック結晶を導入した薄膜Si太陽電池における、フォトニック結晶構造の最適化を目標としている。本年度は、新たに、当初計画にはない単結晶Si太陽電池への検討へと展開し、大幅な短絡電流密度の増大が可能なフォトニック結晶構造の設計に成功した。このように、本年度も、研究は順調に進展しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、厚さ20μmのバックコンタクト型の単結晶Si太陽電池構造におけるさらなる短絡電流密度の増大に向けた、フォトニック結晶構造の探索をさらに進める。具体的には、遺伝的アルゴリズム等の、広い解析空間を効率的に探索可能な解析手法を用い、さらなる短絡電流密度向上のためのフォトニックナノ構造の理論検討を進めていく計画である。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度は、解析を行うための大型計算機の利用料などに使用する計画であったが、契約量等について再検討を行った結果、予算の縮減が可能となり残額が生じた。研究遂行には支障は生じなかった。翌年度、解析に必要な計算機・ソフトウェアの購入や大型計算機の利用料等に、研究費を使用していく計画である。
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