研究課題/領域番号 |
15K17480
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
高島 圭介 東北大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (70733161)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 大気圧プラズマ / ナノ秒パルス放電 / ラジカル生成 / プラズマ化学 / プラズマ殺菌 |
研究実績の概要 |
殺菌や難分解性化学物質の分解に効果的な水酸基ラジカルの,大気圧非平衡空気プラズマによる高密度生成を目的として,初年度は本研究の特色である交流電圧を重畳したナノ秒パルス大気圧空気放電装置を開発した.さらに,二年目に予定していたレーザー誘起蛍光法による水酸基ラジカルの計測(OH-LIF)および高速フーリエ変換型赤外吸収(FTIR)分光装置によるオゾン等の計測を行い,以下の知見が得られた. 1.交流電圧を重畳したナノ秒パルス大気圧空気放電の電圧-電荷特性を計測し,交流を重畳することによりナノ秒パルス放電直後の蓄積電荷を反転させられることを実証した(帯電反転制御ナノ秒パルス大気圧プラズマ).また,通常のナノ秒パルス放電と比較して,帯電反転制御ナノ秒パルス大気圧プラズマではより多くの電荷が移動することがわかった.さらに,この電荷移動量がナノ秒パルスを重畳する交流の位相(パルス印加位相)に依存することを示し,本放電特有のパルス印加位相によるプラズマ生成活性種の制御が可能であることを示した. 2.高速フーリエ変換赤外吸収分光(FTIR)計測より,酸素の解離から生じるオゾンはナノ秒パルスを重畳することでより効率よく生成され,本プラズマが酸素分子の効率的な解離に有効である可能性を示した. 3.プラズマ装置に水を導入することで放電装置の外部に有意な量のOHラジカルが放出されていることがOH-LIF計測より明らかとなった.この放出されるOHラジカルの生成量もまたパルス印加位相に依存することを実験的に示し,水の解離もパルス印加位相に影響を受けていると考えている. 以上のことから,帯電反転制御ナノ秒パルス大気圧プラズマは,特色ある放電制御因子であるパルス印加位相により酸素や水の解離量や効率を変化させ,大気圧非平衡空気プラズマによるプラズマ生成活性種の生成を制御できる可能性を示唆している.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
初年度に予定していた交流電圧を重畳したナノ秒パルス大気圧空気放電装置の開発および,放電の位相と同期したレーザー計測システムの開発は完了した.さらに,二年目に予定していたレーザー誘起蛍光法による水酸基ラジカルの計測,およびFTIRによるオゾンと亜酸化窒素の計測を既に開始しており,二年目に予定している水酸基ラジカルの空間分布計測と絶対密度計測,および水酸基ラジカルの高密度化に向けた準備が整っている.
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今後の研究の推進方策 |
水酸基ラジカルの空間分布計測と絶対密度計測に向けた校正手法の確立と,FTIRで計測されるオゾンと亜酸化窒素の絶対密度校正を行う.これらは,様々な検出系と照らし合わせるまたは標準ガスを用いることで絶対密度の構成を行う予定である.それら化学種の生成メカニズムを検討し,放出されると水酸基ラジカルの高密度化を目指す. 具体的には水酸基ラジカルの生成に重要と考えられる放電状態の特定を行い生成量の最適化を図る.放電特性評価のために,本研究では発光分光を行うが,ナノ秒単位の時間分解能力を要するため分光器を現在改良している.二年目に,帯電反転制御ナノ秒パルス大気圧プラズマの電荷移動に伴う発光スペクトルの診断を行い,水酸基ラジカルの高密度生成を試みる. 一方で,生成された水酸基ラジカルはただちに周囲の別の活性種と反応するため,水酸基ラジカルと反応する窒素酸化物等の濃度を抑えることにより,生成した高密度水酸基ラジカルを輸送することを模索する.
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