【目的】焦電結晶を利用したX線源は、小型軽量で低消費電力である点で様々な応用に対して魅力的であるが、一方でX線管に比べてX線強度が小さく不安定であることが欠点である。焦電結晶X線源の高性能化のためには、X線発生に関する実験データを蓄積すると同時に、いまだ十分な理解が得られていないX線源としての動作原理を明らかにすることが必要である。本研究では、焦電結晶によるX線発生機構について調査し、焦電結晶X線源の高性能化のための基礎的な知見を得ることを目的とする。 【方法】低圧気体中で焦電結晶(タンタル酸リチウム)を温度変化させ、発生するX線を計測する。また、結晶表面に発生する分極電荷量と、その時に放出・加速される電子の強度およびエネルギーを計測する。以上の結果から、焦電結晶による電子放出・加速機構について検討する。特に、結晶の面積、結晶の厚さ、雰囲気気体の圧力、結晶表面と対向電極の距離、結晶の温度変化量のそれぞれを変化させながら実験を行い、それらへの依存性について考察する。 【成果】結晶表面の電荷量および放出電子を計測するための装置を新たに設計・製作した。焦電結晶(タンタル酸リチウム)は、大きさの違いによる影響を評価するため、直径2.25、4.3、7.1 mm、厚さ2、4、10 mmのものを用意した。まず、結晶を温度変化させてX線を発生させる実験を行った。実験から、発生するX線の強度は結晶面積に依存するが単純な比例関係にはないこと、結晶厚さとX線の最大エネルギーはほぼ比例関係にあること、結晶厚さはX線強度に大きく依存すること、などを確認した。また、発生するX線強度は、雰囲気気体の圧力に対しては約1Pa以下でほぼ一定になること、結晶表面と対向電極の距離に対しては、最大となる距離が存在することが明らかとなった。
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