本研究は液体の導電率や粘度を測定できる横波型弾性波センサの開発を目的とする。特に、横波型弾性波を励振可能なc軸平行ZnO膜(圧電軸が基板面に対して一方向に揃ったZnO膜)を石英パイプ外周に成膜し、横波型弾性波の円周方向多重周回を実現してセンサの高感度化を目指す。 当該年度では、パイプ外周を伝搬する横波型弾性波の励振と液体負荷時のセンサ特性について検討した。まず、直径20mm、肉厚1.5mmの石英パイプ外周の一部にc軸平行ZnO膜を成膜し、その上に櫛形電極を作製した。電極に高周波信号を印加し時間応答を測定した結果、4周程度の弾性波の周回が確認された。また、1周目の弾性波の周波数特性から130MHz付近に横波型表面波、160~350MHz付近に複数の横波型板波が励振されていることが判った。純水をパイプ外部と内部にそれぞれ負荷したところ、表面波では外部負荷、板波では内部負荷と外部負荷の両方で、弾性波の減衰が観測された。さらにグリセリン水溶液(濃度20%)を負荷した結果、純水からの粘度増加によって弾性波の減衰量も増加した。よって、パイプ外部または内部に液体を負荷することで粘度測定の可能性が示唆された。多重周回によって弾性波が長距離伝搬すると、液体負荷による影響も大きくなり高感度化につながる。センサ構造を検討し周回数を増加させることが今後の課題となる。 また、パイプ外周全面にc軸平行ZnO膜を成膜することで外周に負荷した液体の導電率も評価可能となる。当該年度では、外周全面で一様な膜を得るため、成膜装置に自動回転機構を構築し、パイプを回転させながら成膜する手法について検討した。作製したZnO膜をX線回折法で評価した結果、外周全面でZnO膜のc軸が管軸と平行に配向していることが判った。回転速度を検討し、より高配向なc軸平行ZnO膜を形成することで、導電率センサへの応用も期待される。
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