研究課題
X線自由電子レーザー施設SACLAの軟X線ビームラインBL1において、重元素であるキセノン原子、および重元素を含む分子であるジヨードメタンに自由電子レーザーを集光して照射し、放出されるイオンの収量と3次元運動量を計測した。さらに、近赤外レーザーも同時に照射し、2色レーザー照射によるイオン収量や運動量の変化を捉えることを試みた。キセノン原子を試料とした実験では、2色のレーザーを同時に試料に照射し、空間的なオーバーラップを容易に実現する手法を開発した。また、自由電子レーザー照射後に近赤外レーザーが照射された場合のみに起こる現象を捉えることに成功し、その立ち上がり時間から自由電子レーザーを利用したポンプ・プローブ実験ではカギとなる時間原点の決定手法の開発に成功した。これらの成果は、本課題で目標とする、ポンプ・プローブ計測による分子形状と電子状態の変化と相関を捉えることを達成するために必要な技術開発である。ジヨードメタン分子を標的とした実験では、一つの複数のイオンが運動量を持って放出され、それらの運動量は相関を持つ。これらの解析は現在進行中である。また、平成27年度に放射光を用いて実施した重元素を含むクラスターの荷電粒子多重同時計測実験による結果を、平成28年度に学術論文としてまとめ、公表した。さらに、平成27年度にSACLAの硬X線ビームラインBL3で実施したジヨードメタン分子へのX線自由電子レーザー照射実験の成果を、平成28年度にまとめ、学術雑誌に投稿中である。
2: おおむね順調に進展している
本課題ではポンプ・プローブ計測による分子形状と電子状態の変化と相関を捉えることが目標であるが、本課題の遂行に必要な技術開発が整ってきたため。また平成29年7月にビームタイムを取得することもでき、平成29年度も継続して自由電子レーザー利用研究を推進できる見込みであるため。
平成29年度も継続して、自由電子レーザーと光学レーザーを用いたポンプ・プローブ計測を実施する。また、放射光を用いて、定常状態分子を標的とした実験も実施し、ポンプ。プローブ計測による時分割測定データの理解を深める。
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Nature Communications
巻: 8 ページ: 14277
10.1038/ncomms14277