研究実績の概要 |
金属ナノ粒子のプラズモンは光エレクトロ二クス分野を切り開く可能性をもつ。申請者らはX線光電子分光(XPS)スペクトルに現れる、プラズモンスペクトルを正しくフィッティングする手法の開発に取り組んだ。具体的には粒子同士の量子干渉効果まで含めた量子ランダウ方程式を導き、スペクトルを解析するプログラムを組んで計算した。これらを3次元系、2次元系、0次元電子系に適応した。 1.3次元系(固体):プラズモンロススペクトルの放出角依存性、入射光エネルギー依存性を明らかにした。 プラズモンの強度や振動数は物質の形状に依存する。固体中の原子の並びを反映した放出角依存性の計算結果は注目され、出版された(e-J. Surf. Sci. Nanotech. 査読あり14, 73-77 (2016))。 2.2次元系:グラフェンのプラズモンについて計算を行った。光電子の発生によるグラフェン中のポテンシャル変化を求め、3次元用のプログラムを改良して計算した。グラフェンのプラズモン振動数は非常に低く、XPSスペクトルの形状がどのようになるか議論となっていた。このため我々の成果への関心は高く、招待講演1件と学会発表2件を行った(産業利用に役立つXAFSによる先端材料の局所状態解析2018、第13回表面科学放射光表面科学研究部会、表面科学会第3回関東支部講演大会)。 3.0次元系:金属ナノ粒子のプラズモンの計算式を導いた。プラズモン振動によるナノ粒子中の誘電率の変化を計算し、ポテンシャルの変化を求め、量子ランダウ方程式をナノ粒子用に改良した式を導出した。今後は、プログラムに組み込み、プラズモンロススペクトルのナノ粒子径依存性を探求していく。導出過程の式は著書「Plasmon Losses in Core Photoemission Spectra (Springer, 2018)」の11章に掲載された
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