研究課題/領域番号 |
15K17489
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
小川 絋樹 京都大学, 化学研究所, 助教 (00535180)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 斜入射小角散乱 / コンピュータートモグラフィー |
研究実績の概要 |
本研究課題では、放射光放射光を光源とする反射型の小角散乱法(GISAXS)とコンピュータトモグラフィー法(CT)を組み合わせることで、機能性薄膜材料の表面・界面ナノ構造を可視化する新たな手法(GISAXS-CT法)を開発することを目的としている。開発したGISAXS-CT法を用いて、代表的な有機薄膜太陽電池材料のナノ界面構造を、高空間分解能で可視化する。平成27年度では、高空間分解能GISAXS-CT測定及び解析システムの構築のための1.高精度並進・回転機構を有した真空チャンバーの製作。2.並進・回転機構と検出器を同期した全自動測定システムの構築。また、得られたデータの数は膨大になるため、データをイメージ像に再構成し、表示・解析するためのソフトウェアの構築を主として進めた。1のチャンバー開発においては、高輝度・低発散の放射光GISAXS測定を、高精度の並進(X)・回転(φ)スキャンによって行うことを進めている。現在、光のサイズが幅10μmで、10μm以下で駆動可能な並進(X)・1°以下で駆動可能な回転(φ) 機構を有する真空チャンバーの製作を進めている。2の成果として、X,φ及び検出器をを同期するソフトウェアを開発し、全自動測定システムを構築した。また、大量のデータを解析するためのソフトウェアを開発した。 開発した2のシステムを利用し、無機材料薄膜のナノ構造の可視化を行ったところ、像の再構成に成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の目的として、高空間分解能GISAXS-CT測定及び解析システムの構築を設定した。平成27年度では、高空間分解能GISAXS-CT測定及び解析システムの構築に成功した。但し、より高精度なシステムの構築のために、ステージなどの真空チャンバーの製作については現在進行している。測定及び解析システムを用いることで、分解能100ミクロンでのGISAXS-CT測定を行ったところ、無機材料薄膜の像の再構成に成功に加えて、高分子薄膜材料の像の再構成に成功した。当初の計画どおりに研究を進め、期待通りに結果・知見を得ることができた。研究成果の一部は論文一報として出版されており、学会においても発表済みである。また、現在論文一報として登校準備中である。以上の理由により、概ね順調に進展していると判断できる。
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度では、引き続き高分子薄膜材料及び実材料の薄膜のナノ界面構造を、高空間分解能で可視化することを重点的に行う。現状では、分解能100ミクロンでのGISAXS-CT測定がか可能であるが、今後はさらなる分解能の向上を予定している。また、GISAXS測定の特徴の一つとして、X線の入射角を制御することでX線の侵入長を変えることができる。この特徴を利用して、薄膜の表面近傍と内部に分離してナノ構造の分布を可視化することを行う。対象の試料としては、代表的な有機薄膜太陽電池材料であるP3HT/PCBMブレンドを予定している。本試料を用いて表面と界面の深さ方向の空間的な構造の違いを得ることが難しい場合には、他の機能性高分子材料を用いて表面・界面の可視化を進めていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成28年度への使用額の発生については、高分解能な測定が可能な仕様にするために、設計する真空チャンバーの設計、自動ステージの選定に時間を有したことから、生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
平成29年度では、仕様を確定することで、真空チャンバーの制作及び自動ステージを購入する予定である。
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