研究課題/領域番号 |
15K17491
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研究機関 | 東洋大学 |
研究代表者 |
内田 貴司 東洋大学, 学際・融合科学研究科, 准教授 (90470343)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 原子内包フラーレン / 質量分析 |
研究実績の概要 |
平成28年度は、以下の3項目について研究を行った。 1. 鉄ーフラーレン複合物の構造分析に関する検討を行った。具体的には、鉄ーフラーレン複合物のレーザー脱離によるイオン化法を用いた高分解能質量分析とヘリウムガス衝突による複合物分解過程の解析から、生成された鉄ーフラーレン複合物の構造の類推を行ったが、結果としては、鉄ーフラーレン複合物が内包フラーレンであることを示すデータは得られなかった。ただし、フラーレン分子の外側に鉄原子が結合した新しい分子を示す結果が得られた。 2. 量子化学計算による鉄ーフラーレン複合物の安定構造に関する検討を平成27年度からさらに進めた。興味深いことに、鉄単体で内包されるよりも他の元素と鉄を組み合わせて内包した方がより安定になりうるという結果が得られた。また、鉄原子を介したフラーレン重合体が比較的安定であるという計算結果も得られた。 3. 上記の2項目の研究結果をもとに、レーザー蒸発と高分解能質量分析および分解過程の解析装置を組み合わせた装置を用いて、鉄と他の原子の内包フラーレン生成や鉄原子を介したフラーレン重合体の生成のための実験セットアップの構築や予備的な実験を行った。 今後は準備した実験セットアップを用いて、どのような元素が鉄と他の元素の2種以上の原子が内包したフラーレンの生成に適しているか系統的に調べたい。また、鉄原子を介したフラーレン重合体についても、新しい炭素クラスターとして今後の研究を進展させたい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
磁性金属内包フラーレン生成を主眼に置き、これまでは単一の鉄原子を内包しようと考え研究してきたが、平成28年度の研究により、鉄と他の元素を組み合わせることで、より安定で磁性を持った原子内包フラーレンを生成できる可能性を示すことができた。このようなことから現在までの進捗状況を判断した。
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度に行った研究の結果を受けて、鉄と他種元素を組み合わせて原子内包フラーレン生成を行うということと、鉄が外側に結合した新しい炭素クラスターの生成条件の探索などを、高分解能質量分析計とレーザー蒸発装置を組み合わせた装置により研究する。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初計画では装置制御機器を整備予定であったが、予備実験で得られた結果から該当機器を整備しなくとも研究を有効に遂行できるものと判断したため、次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
生成する試料の磁気特製評価のための外部委託分析にかかる費用や、不活性雰囲気で実験を行うための実験機器の整備費用、また研究協力者との共同実験のための出張費用として使用する。
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