本研究は,多様な機能を発現する生物の形状を計算機の中で意図的に進化させることで,電気化学界面の機能をデザインするための基礎研究として位置付けている.電気化学界面の機能は,通常化学的な方法で制御されている.本研究では,電気化学反応界面の形状を工夫することによって機能を制御する方法を確立することを試みる.形状による機能制御を確立することで食品や医療分野など化学的な制御を用いることが困難な環境において電気化学界面の機能制御を実現する. 本年度は,電気化学反応界面の流動特性を制御することを目的に,実際の生物形状を用いた形状生成と流動特性評価を実施した.具体的には,サメ肌表面の突起形状を模擬したリブレットとトンボの翅の断面形状をブレンディングすることで,電気化学反応界面近傍の流動特性を制御する形状を設計することを試みた.まず,トンボの翅の表面に大きさや設置位置を系統的に変化させたリブレットを配置することで新形状の候補を作成した.次に,数値流体解析を用いて作成した形状の界面近傍における流動特性を評価した.系統的評価を効率的に実施できるようにワークステーションを整備した.今年度までの研究で,基礎技術の開発を完了した.しかし,最終目的を達成するには至っていない. 今後は,上記の基礎技術を用いて(a)電気化学計測の研究者と共同で新形状電極の作成と電気化学反応速度の計測,(b)整備したワークステーションによる様々な生物形状のブレンディングによる新形状生成,を実施する計画である.これらの研究を展開することで,「生物の形状を意図的に進化させることで電気化学反応速度を制御するための形状を獲得する」という最終目的を達成する.
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