災害対策や経済危機回避など社会問題の解決に,計算機シミュレーションの利用が活発になってきた.その中で,社会問題における多数の要因から重要な要因を特定する解析を実現可能にする動的な実験計画法を,進化計算にヒントを得て体系化することを目的に,本研究は実施された.旧来の実験計画法により,複数の要因を考慮し,計算機シミュレーションの実験数を削減することが可能であった.しかし,より多数の要因かつ要因間の交互作用を考慮するとき,実験数は爆発的に増加し,スーパーコンピュータを利用しても網羅的にシナリオを検証することは困難となる.そのため,解析に影響の少ない要因を取り除き,より少ない実験数で要因の重要度を推定することが求められた.ここでは,重要な要因を進化計算を応用して発見することに挑戦した. 目標達成のため,動的な実験計画を行うことでより実験コストを削減できる例を報告した.鎌倉地方において津波からの徒歩での避難に要する時間と避難時間を増加させる原因について調べた.そして,動的な実験計画を実施することで,網羅的にシナリオを検証する場合に比べ,実験コストが約65%削減できることが示された. 鎌倉地方における津波からの避難における実験コスト削減では,動的な実験計画を作成するルールを人が与えることで実現した.一方で,より重要な要因を効率よく発見するために,進化計算を利用することを提案した.進化計算を応用してより重要な要因を発見するためには,実験すべきシナリオの推定方法が必要であった.そこで,シナリオごとの避難時間の標本分散がより大きくなるようにシナリオセットの評価基準を与えることを提案し,金沢の津波避難問題において,重要な要因を発見できることを示した.また,一般的な社会問題に適応するため,ベンチマーク問題を提案した.提案したベンチマーク問題において重要な要因を発見できることを示した.
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