研究課題/領域番号 |
15K17504
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研究機関 | 弘前大学 |
研究代表者 |
立谷 洋平 弘前大学, 理工学研究科, 准教授 (90439539)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 無理性 / 線形独立性 / 超越性 / 代数的独立性 / テータ関数 / ベキ級数 |
研究実績の概要 |
平成28年度に得られた研究成果は以下の通りである 1.テータ関数値の代数的独立性(C. Elsner氏との共同研究). テータ関数の超越性、代数的独立性の研究は、Yu. V. Nesterenko(1996)のラマヌジャン関数値の代数的独立性に関する結果を皮切りに盛んに研究されてきた。例えば、D. Bertrand(1997)や、D. Duverney-西岡啓二-西岡久美子-塩川宇賢(1996)らは、Yu. V. Nesterenkoの結果を応用し、導関数を含めた種々のテータ関数値の超越性や、ある同一点における値の代数的独立性を示した。その一方、固定されたテータ関数の異なる点における代数的関係性についての結果はあまり知られていなかった。そのため研究代表者は、平成27年度よりC.Elsner氏と共にこの問題に取り組み、平成28年度初期までに代入値に関する一定の条件の下、代数的独立性に関する部分的な結果を得た。仮定した条件については不満が残るものであったが、平成28年度にはテータ関数の間の関係式を利用することで、この条件を緩和し一般化することに成功した。
2.漸近的手法を通した関数の超越性の証明(M. Coonsとの共同研究). Mahler関数をはじめとしたある種の関数族に対しては、「関数値の超越性」が「関数自身の関数体上の超越性」に直結する。そのため、超越数論においては、関数自身の超越性や代数的独立性そのものが重要な意味を持ち、また必要となる場面がある。本研究では、漸近的なアプローチを通してDuffin-Schaeffer(1945)の結果を一般化し、有理整数を係数とするベキ級数についての超越性に関する結果を得た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
テータ関数値に関する代数的独立性の研究においては、着想から一定の結果が得られるまで予想していたよりも早いスピードで研究が進展した。また関数自身の超越性や代数的独立性の証明法についても、M. Coons氏との共同研究により新たな知見・アプローチが得られ、今後の研究の発展に繋がると思われる部分が多く感じられた。 以上を総合的に考慮し、進捗状況に関しては概ね順調に進展していると評価した。
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今後の研究の推進方策 |
今年度までに得られたテータ関数値の代数的独立性に関する結果は、主に古典的なテータ関数を対象としたものであったが、本研究手法は他の一連のテータ関数についても適用できると期待している。この問題の整理・検討のため、平成29年度にはC. Elsner氏を招聘し研究討議を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
最も大きな理由は、テータ関数値の研究が大幅に進み、今後の研究内容の整理・検討のため共同研究者との研究打ち合わせが必要になった点が挙げられる。そのため、今年度は科研費の使用を少し控えた。またオーストラリア出張の際に、先方からの援助を頂いたことも一因である。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度分として請求した助成金については、共同研究者の招聘費用、及び昨年度までに得られた研究成果を研究集会等で発表するためにかかる出張費用として主に使用する予定である。
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