研究実績の概要 |
平成29年度に得られた研究成果は以下の通りである 1. テータ零値の間の従属関係式の導出(C. Elsner氏, F. Luca氏との共同研究). Yu. V. Nesterenko(2006)は, ある種のテータ零値に対して, それらの間の従属関係式を導くアルゴリズムを与えた. 研究代表者らは, Nesterenkoの結果から得られる従属関係式を起点として, テータ零値固有の倍角の公式や, 無限積表現を援用することで, より一般のテータ零値に対しても従属関係式が構成できることを明らかにし, いくつかの場合においては具体的な従属関係式を求めた. また, 本研究結果の副産物として, 関連するテータ関数の値の代数的独立性や, ルジャンドル記号を含むランベルト級数の超越性を得ることができた.
2. 二項回帰数列の逆数和の数論的性質の解明. P. Erdos(1948)によって開発されたランベルト級数の無理性を導く手法は, 実数の展開における基数が有理整数でない場合においても有用であることが, 研究代表者らの最近の研究によって明らかにされた. そこで本研究では, フィボナッチ数列やルカ数列に代表される二項回帰数列を対象に, 空隙が比較的小さい部分列の逆数和の数論的性質について考察した. その結果, 空隙に関する一定の条件の下では, 逆数和の無理性を示すことができた. 証明において仮定した条件の緩和や, 線形独立性への結果の拡張は今後の研究課題である.
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