研究実績の概要 |
ゼータ関数の理論において, ディリクレ級数を二つの部分和として近似する近似関数等式は重要である。実際, ホールはリーマンゼータ関数の零点の研究で一階微分 ζ'(s) の二乗の近似関数等式をハーディー・リトルウッドの手法を用いて導いている。 その論文でホールはテッチマーシュによるリーマンゼータ関数の二乗の近似関数等式の論文の手法を用いてその誤差項を改良する問題について言及している。本研究課題の一つの大きな目標はそれを実現することである。テッチマーシュの方法をリーマンゼータ関数の導関数の場合に適用できるように exact formula なるものを導いた。テッチマーシュが考察したベッセル関数の積分を対数関数のべき乗が入った場合に一般化して考察した。それを三角関数で近似しハーディー・リトルウッドの論文で用いられている補題を対数関数が込められた場合に拡張した。これらの結果を用いて問題となっている誤差項をホールが示唆している形への改良に成功した. さらに, この方法を深めることによりホールが同じ論文中に述べている ζ(s)ζ''(s), ζ'(s)ζ''(s)の近似関数等式の誤差項の改良も得ることができた。この成果を論文にまとめて現在投稿中である(研究協力者の谷川好男氏, 古屋淳氏との共著)。また, 前年度に行った制限付き約数関数の研究を発展させようと試みている中で, スリヤナラーヤナ, シヴァラマプラサードの論文中に, メビウス関数の部分和を, 任意の自然数 m と互いに素であるという制限下で考えている結果を見つけた。 その証明の簡易証明を得た。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ホールによるリーマンゼータ関数ζ(s) の一階導関数のζ'(s)の二乗の近似関数等式の誤差項を改良することが本研究課題の一つの大きな目標であったが, 研究協力者の谷川好男氏, 古屋淳氏との議論を重ね, それを得ることが出来た。また, ホールが言及しているζ(s)ζ''(s), ζ'(s)ζ''(s) の近似関数等式の誤差項の改良も出来た。これらの成果を論文「Titchmarsh method for the approximate functional equations for ζ'(s)ζ'(s), ζ(s)ζ''(s), ζ'(s)ζ''(s)」(J. Furuya, M. Minamide, Y. Tanigawa 著)にまとめて投稿中である。また, これらの定理を関西大学, 首都大学で行われた日本数学会の講演会で発表した。また, 新約数問題をガウスの円問題に応用した論文‘On a new circle problem’(J. Furuya, M. Minamide, Y. Tanigawa)が J. Aust. Math. Soc. に掲載が決定した. 制限付き約数問題に関連して, 制限付きメビウス関数の和に関して, スリヤナラーヤナ, シヴァラマプラサードの論文の一つの結果について簡易証明を得た。その方法を日本数学会中国四国支部例会(愛媛大学)で講演した。
|
今後の研究の推進方策 |
無平方数でない整数の分布の研究が進んでいないので, それを進めたい。また, 制限付き約数関数の研究に関連して, 制限付きメビウス関数の平均についてスリヤナラーヤナ, シヴァラマプラサードの公式の簡易証明を得たが, その方法を他の数論的関数にも応用し論文としてまとめたい。ゼータ関数の微分の二乗の近似関数等式の応用や一般化について, 研究協力者と二ヶ月に一度は対面で議論する。得られた成果を日本数学会の講演会で発表したい。
|